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要点まとめ
- 在庫は現金が物に変わった状態です。倉庫に積んである在庫の金額は、そのまま「使えない現金」の額と考えてください。
- 在庫を1日分減らせば1日あたりの売上原価と同じ金額の現金が浮きます。月商1,000万円・原価率70%の会社なら1日あたり23.3万円。30日縮めれば700万円です。
- もっと厄介なのは在庫を積むと帳簿上の利益が増えて税金まで増える点です。700万円分積むと仕入で700万円、税金で約210万円。合計910万円の現金が出ていきます。
測り方は在庫回転期間の測り方へ。税金の話は在庫は利益を膨らませるに書いています。
決算書では利益が出ているのに現金がない。倉庫は品物でいっぱい。
これは儲けが在庫という形で倉庫に積み上がっている状態です。
在庫は運転資金の3要素のひとつで
売掛金と並んで会社の現金を縛る要因です。しかも売掛金と違い
放っておいても現金には戻りません。売らないかぎり永久にお金になりません。
在庫回転期間の測り方
在庫が多いか少ないかは、金額の大小ではなく「何日分持っているか」で見ます。
売上規模が違う会社どうしでも比べられるからです。
在庫回転期間(日)
棚卸資産 ÷ (売上原価 ÷ 日数)
分母は1日あたりの売上原価です。売上高ではなく売上原価で割るのがポイントです。
在庫は原価で計上されているので売上高で割ると日数が短めに出ます。
月商1,000万円・原価率70%の会社で計算します。
| 項目 | 計算 | 金額・日数 |
|---|---|---|
| 月間の売上原価 | 1,000万円 × 70% | 700万円 |
| 1日あたりの売上原価 | 700万円 ÷ 30日 | 23.3万円 |
| 棚卸資産が1,400万円なら | 1,400万円 ÷ 23.3万円 | 60.0日分 |
この会社は60日分の在庫を持っています。
仕入れてから売れるまで平均2か月かかっていてその間ずっと1,400万円の現金が寝ているわけです。
1日縮めるといくら浮くか
実務でいちばん使えるのがこの数字です。1日あたりの売上原価がそのまま「在庫1日分の金額」になります。
| 短縮する日数 | 浮く現金 | 目安 |
|---|---|---|
| 1日 | 23.3万円 | 発注の精度を上げる |
| 7日 | 163.3万円 | 発注サイクルを週次にする |
| 15日 | 350.0万円 | 滞留品の処分 |
| 30日 | 700.0万円 | 調達リードタイムの短縮 |
この会社にとって「在庫を30日減らす」は「700万円を調達する」のと同じ価値があります。
しかも利息はかからず返す必要もありません。
借入を考える前に、まずここを見直すのが順番です。

在庫は利益を膨らませ、税金まで増やす
在庫のいちばん厄介な性質がこれです。在庫を積むと帳簿上の利益が増えます。
売上原価の計算式は「期首在庫 + 当期仕入 − 期末在庫」です。
期末在庫が増えれば売上原価はその分だけ減ります。
売上が同じで原価が減れば、利益は増えます。
| 項目 | 在庫を積まない場合 | 在庫を700万円積んだ場合 |
|---|---|---|
| 売上高 | 同じ | 同じ |
| 期末在庫 | ±0 | +700万円 |
| 売上原価 | 基準 | −700万円 |
| 利益 | 基準 | +700万円 |
| 法人税等(実効税率 約30%) | 基準 | +210万円 |
現金は二重に出ていきます
仕入で 700万円。増えた利益にかかる税金で 約210万円。
合わせて約910万円の現金が会社から出ていきます。
それなのに損益計算書の上では利益が700万円増えて見える。
「儲かっているのに金がない」の典型的な正体がこれです。
実効税率は会社の規模や所得金額で変わります。正確な負担額は顧問税理士に聞いておくと確実です。
それでも「在庫を積むと税金が増える」という向きは変わりません。
逆に売れない在庫を処分すれば利益が減って税金も減り、現金も戻ります。
決算前に滞留在庫を見直す意味はここにあります。
なぜ在庫は増えてしまうのか
| よくある理由 | 起きること | 対処 |
|---|---|---|
| 欠品が怖い | 安全在庫を厚めに積む | 品目ごとに欠品コストと在庫コストを比べる。全品を厚くしない |
| まとめ買いの値引き | 単価は下がるが在庫日数が伸びる | 値引き額と、寝かせる期間の資金コストを比較する |
| 売れ行きの読み違い | 滞留品が積み上がる | 滞留日数でランク分けし、一定を超えたら値引き処分 |
| 処分すると赤字が出る | 塩漬けにして先送り | 先送りしても価値は下がる。早いほど傷が浅い |
実際にいちばん多いのは最後の行です。処分すれば損失が確定するので決算をまたいで先送りする。
でも在庫の価値は時間とともに下がっていき、その間ずっと現金も寝たままです。
先送りは損を増やす選択です。

在庫が重い業種と、そうでない業種
在庫削減に力を入れるべきかどうかは業種で決まります。
在庫をほとんど持たない業種で在庫管理を頑張っても効果はありません。
| 業種 | 在庫の重さ | 詳しくは |
|---|---|---|
| 製造業 | 最も重い。原材料・仕掛品・製品の3段階で滞留する | 製造業の資金繰り |
| 小売業 | 重い。品揃えと在庫日数がトレードオフ | — |
| 建設業 | 資材の在庫は軽いが、仕掛工事が実質的な在庫 | 建設業の資金繰り |
| 運送業 | ほぼ無い。売掛金が主戦場 | 運送業の資金繰り |
在庫の軽い業種なら回収条件の交渉に時間を使うほうが効果は大きいです。
どこに改善の余地があるかは運転資金の計算方法で確認できます。
よくある質問
在庫回転期間は何日が適正ですか
業種による差が大きく、一律の適正値はありません。
他社と比べるより自社の推移を追うほうが役に立ちます。
売上の伸び以上に在庫日数が伸びていたら危険信号です。
四半期ごとに測って日数が増えていないかを見ておけば十分です。
売上原価ではなく売上高で割ってもいいですか
日数が実際より短く出ます。在庫は原価で計上されているので
売上高(原価に利益を乗せた金額)で割ると分母が大きくなりすぎるためです。
ざっくり見るだけなら構いません。ただ金融機関に説明する数字は売上原価ベースで出してください。
在庫を減らせば必ず資金繰りは良くなりますか
在庫そのものは減ります。でも欠品による機会損失が出れば売上が落ちます。
安全在庫を一律に削るのではなく回転の遅い品目から選んで減らすのが基本です。
よく売れる品目の在庫はむしろ持っておいたほうがいい場合もあります。
決算前に在庫を処分すると税務上問題になりませんか
実際に販売または廃棄した事実があれば通常の取引です。
廃棄した場合は廃棄した事実を証明できる記録(廃棄証明書、写真、稟議書など)が必要になります。
評価損の計上には要件があるので処理方法は事前に顧問税理士と相談しておくと安心です。
まとめ
- 在庫は現金が物に変わった状態。売らないかぎり現金に戻らない
- 在庫回転期間 = 棚卸資産 ÷(売上原価 ÷ 日数)。売上高ではなく売上原価で割る
- 在庫を1日減らすと、1日あたりの売上原価と同額の現金が浮く。月商1,000万円・原価率70%なら1日23.3万円
- 在庫を積むと売上原価が減って利益が増え、税金も増える。700万円積めば現金は約910万円出ていく
- 処分の先送りは損を増やす選択。価値は時間とともに下がる
- 在庫の軽い業種では、回収条件の交渉のほうが効果が大きい
このページについて
本ページは一般的な情報提供を目的としたもので、個別の経営判断や税務に関する助言ではありません。
実効税率は会社の規模・所得金額・所在地により異なります。
在庫の評価損や廃棄損の税務上の取り扱いは要件があるため、顧問税理士または所轄の税務署にご確認ください。
記載した計算例は説明のための仮設例です。










