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この記事の要点
- 紙の約束手形と小切手は、2027年度初から電子交換所での交換が廃止されます。銀行に持ち込んでも決済できなくなるということです。実質的な期限は2027年3月末。
- 同じ額面1,000万円・残存120日で比べると、手形割引 約9.9万円/でんさい割引 約9.2万円/2社間ファクタリング 約100万円。ファクタリングは手形割引の約10倍のコストです。
- 手形が無くなると資金繰り表から「受取手形の期日入金」「割引による調達」の行が消えます。入金の山が前倒しになるので、表を組み直す必要があります。
紙の約束手形と小切手は、まもなく決済できなくなります。
「廃止が検討されている」という段階はすでに過ぎていて、銀行界として交換をやめる期日が決まっています。
受け取る側にとっては、入金が早まるという良い話です。
ただし何もしないでいると、取引先から「今後は何で払えばいいか」と聞かれたときに答えられません。
いま決めておくべきことを整理します。
いつまで使えるのか
2つの流れが同時に進んでいます。混同しやすいので分けて整理します。
| 時期 | できごと | 効果 |
|---|---|---|
| 2021年6月 | 成長戦略実行計画(閣議決定)で、5年後をめどに約束手形の利用廃止と小切手の全面電子化を進める方針が示される | 方針 |
| 2021年7月 | 全国銀行協会が自主行動計画を策定。2026年度末までに交換枚数ゼロを目標に | 業界目標 |
| 2024年11月1日 | これ以降に振り出す約束手形で、サイト60日超は行政指導の対象に | 長いサイトが不可 |
| 2026年1月1日 | 下請法が取適法へ。対象取引で手形払いを禁止 | 法令で禁止 |
| 2027年度初 | 全国銀行協会が電子交換所での手形・小切手の交換を廃止すると公表(2025年3月26日) | 決済できなくなる |
最後の行が決定的です。交換所が交換をやめるということは、銀行に持ち込んでも取り立てられないということです。
紙に印刷された手形が法的に無効になるわけではありませんが、実務上は使えなくなります。
実質的な期限は2027年3月末と考えてください。
出典:全国銀行協会「手形・小切手の電子化に関する中間的な評価を踏まえた抜本的な取組み等について~2027年度初からの電子交換所における手形・小切手の交換廃止等~」(2025年3月26日)/金融庁「手形・小切手機能の全面的な電子化について」(2026年9月6日確認)
サイトの長い手形は先に期限が来ます
交換廃止の直前に、サイトの長い手形を受け取ってはいけません。
たとえば2027年1月に120日サイトの手形を受け取ると、期日は2027年5月。
そのときには交換所が動いていない可能性があります。
2026年後半以降は、期日が2027年3月末を越える手形を受け取らないよう条件を確認してください。
現金化のコストを同じ条件で比べる
手形の代わりに何を使うかを決めるとき、コストの比較で混乱が起きます。
手形割引は「年率〇%」、ファクタリングは「手数料〇%」で提示されるため、そのままでは比べられないからです。
額面1,000万円・支払期日まで120日、という同じ条件で計算しました。
| 手段 | 提示のされ方 | 実際のコスト | 年率換算 | 不渡り時の負担 |
|---|---|---|---|---|
| 手形割引 | 年3.0% | 約9.9万円 | 3.0% | 自社が買い戻す |
| でんさい割引 | 年2.8%〜 | 約9.2万円 | 2.8%〜 | 自社が買い戻す |
| 2社間ファクタリング | 手数料10% | 約100万円 | 約30.4% | 原則として負わない |
計算式:割引料 = 額面 × 年率 × 日数 ÷ 365。
手形割引 10,000,000 × 3.0% × 120 ÷ 365 = 98,630円。
でんさい割引 10,000,000 × 2.8% × 120 ÷ 365 = 92,055円。
ファクタリング 10,000,000 × 10% = 1,000,000円、年率換算は 10% × 365 ÷ 120 = 30.4%。
※ 別途、金融機関の事務手数料(1回220〜880円程度)がかかります。
でんさいの割引率は取引先の信用力・額面・残存日数によって決まるため、2.8%は下限の目安です。
ファクタリングは手形割引の約10倍のコストになります。ただし単純に「高いから使わない」ではありません。
手形割引とでんさい割引には償還請求権があり、取引先が支払えなければ自社が買い戻す義務を負います。
ファクタリングは原則としてこの義務がありません。
コストの差は、取引先の倒産リスクを誰が負うかの差でもあります。
手数料の決まり方と業者の見分け方はファクタリングとはにまとめています。
受け取る側がいま決めておくこと
1. 取引先ごとに新しい支払方法を確認する
取引先が手形をやめて何に切り替えるかで、入金日が変わります。選択肢は3つです。
| 切替先 | 入金のタイミング | 自社への影響 |
|---|---|---|
| 銀行振込(現金払い) | 支払期日に全額 | 最も良い。立て替えが消える |
| でんさい(電子記録債権) | 記録された期日に自動入金 | 手形とほぼ同じ。期日前は割引で現金化 |
| ファクタリングの利用を勧められる | — | 実質的な支払サイト延長。コストを自社が負う |
3つ目に注意してください。取適法では、
支払期日までに代金相当の金銭を得ることが困難なものは認められないとされています。
「ファクタリングで先に受け取ってほしい」という提案は、実質的に支払いを遅らせながらコストを受注側に負わせる形になり得ます。
2. でんさいを使うなら、先に銀行で手続きしておく
でんさいは取引銀行を通じて利用登録が必要です。取引先が使っていても、自社が登録していなければ受け取れません。
切り替えの直前に慌てないよう、使う可能性があるなら先に登録だけ済ませておくのが安全です。
3. 資金繰り表を組み直す
手形が無くなると、資金繰り表から次の行が消えます。
- 受取手形の期日入金(数か月先に置いていた入金)
- 手形割引による調達(資金が足りない月に使っていた調整弁)
- 割引料の支払い
代わりに入金が前倒しで積み上がります。一見すると良いことばかりですが、注意点が1つあります。
手形割引という「いつでも使える調整弁」を失うことです。
これまで足りない月は手形を割り引いて凌いでいた会社は、その手段が無くなります。
当座貸越の枠を先に作っておく
手形割引の代わりになるのは、必要なときだけ引き出せる当座貸越(極度枠)です。
枠を設定しておけば、使わないかぎり利息はかかりません。
枠の設定は資金に余裕があるうちのほうが通りやすいので、
手形が無くなる前に相談しておくことをおすすめします。
いくらの枠が必要かは運転資金の計算方法で計算できます。
発注する側は支払いが前倒しになる
手形を振り出していた側は、これまで数か月先送りできていた支払いを、期日に現金で行うことになります。
必要な運転資金が増えるということです。
月1,000万円を手形(サイト120日)で支払っていた会社なら、
日商33.3万円 × 120日 = 約4,000万円の資金を新たに手当てする必要があります。
切り替えた月は従来の手形の期日と新しい現金払いが重なるので、その月の資金繰りがとくに厳しくなります。
この重なりを見落とすと、切り替え月に資金が足りなくなります。
移行のスケジュールは資金繰り表に落としてから決めてください。
よくある質問
2027年4月以降、手形を受け取ってしまったらどうなりますか
電子交換所での交換が廃止されると、銀行に取り立てを依頼しても決済されません。
紙の手形が法的に無効になるわけではないため、当事者間で支払いを求めることはできますが、
通常の決済ルートには乗りません。そもそも受け取らないよう、事前に支払方法を切り替えておくのが唯一の対策です。
でんさいなら手形と同じように割引できますか
できます。でんさい割引といい、期日前に金融機関へ譲渡して現金化する仕組みです。
割引料の計算方法も手形割引と同じで、額面 × 年率 × 日数 ÷ 365 です。
紙の受け渡しや印紙が不要になるぶん、事務の手間と印紙税は減ります。
手形が無くなると資金繰りは楽になりますか
受け取る側は楽になり、支払う側は厳しくなります。
受け取る側は入金が早まって必要な運転資金が減り、割引料も不要になります。
一方で支払う側は先送りできていた期間を失うので、その分の資金を用意しなければなりません。
自社がどちらの立場に立つことが多いかで、影響は正反対になります。
小切手も同じように使えなくなりますか
はい。全国銀行協会の取り組みは手形と小切手の両方を対象としています。
小切手についても電子交換所での交換が廃止される方向です。
受け取る側は銀行振込への切り替えを取引先に依頼してください。
まとめ
- 紙の手形・小切手は2027年度初から電子交換所での交換が廃止。実質の期限は2027年3月末
- 2026年1月からは取適法の対象取引で手形払いそのものが禁止
- 2026年後半以降、期日が2027年3月末を越える手形は受け取らない
- 額面1,000万円・120日で、手形割引9.9万円/でんさい割引9.2万円/2社間ファクタリング100万円
- コスト差は取引先の倒産リスクを誰が負うかの差でもある
- 手形割引という調整弁を失うので、当座貸越の枠を余裕のあるうちに作っておく
このページについて
本ページは一般的な情報提供を目的としたもので、個別の経営判断や資金調達に関する助言ではありません。
割引率・手数料は金融機関、取引先の信用力、額面、残存日数によって異なります。
記載した計算例は説明のための仮設例であり、実際の条件を保証するものではありません。
制度の適用については、取引金融機関または公的な相談窓口にご確認ください。


