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この記事の要点
- でんさいネットの統計では、直近12か月(2025年9月〜2026年8月)の発生記録は51.1兆円でした。全銀協の電子交換所で交換された手形(7.8兆円)の約6.6倍です。前の12か月と比べると、でんさいは+7.9%で手形は−54.2%でした。
- でんさいを他社に譲渡すると、原則として譲渡した側が保証人になります。取引先が支払えないと、譲渡後でも請求を受ける立場になります。割引に出せるかどうかも、金融機関が個別に決めています。
- 支払う側の発生記録手数料は手形の印紙税(10万円以上100万円以下で200円)より高くなる場合があります。月20通・各50万円なら手形は4,000円ででんさいは5,280〜15,400円です。
受け取る側の方は譲渡・割引のあとの責任、支払う側の方は手数料の比較からどうぞ。
でんさいは、全銀電子債権ネットワーク(でんさいネット)が記録を管理する電子記録債権です。紙の手形のかわりに使われ、期日になると支払う側の口座から受け取る側の口座へ自動で送金されます。
上位の解説は、印紙税や郵送費がかからない点や盗難・紛失の心配がない点を中心に書いています。この記事は、その先にあたる「どれだけ使われているか」「譲渡したあとに責任は残るか」「手数料は手形より安いか」「支払えなくなるとどうなるか」を、でんさいネットと全銀協の公表資料から確かめた内容です。
手形そのものが2027年度初から電子交換所で交換されなくなる話は手形廃止の記事に書いています。
でんさいと約束手形は、何が違うのか
でんさいネットの比較図は、手形を「支払期日の資金利用不可」、でんさいを「支払期日の資金利用可能」としています。ほかの違いも公式の記載で並べました。
| 項目 | 約束手形 | でんさい |
|---|---|---|
| 印紙税 | 10万円以上は課税(100万円以下で200円) | 課税されない |
| 期日の入金 | 受取側が金融機関へ取立てを依頼 | 期日に支払側の口座から受取側の口座へ自動で送金 |
| 金額 | 手形ごとに記載 | 1円以上100億円未満 |
| 譲渡 | 裏書で譲渡 | 回数の制限なし。分割して譲渡もできる |
| 支払方法 | ― | 一括払いのみ発生させられる(分割払いは不可) |
前提:手形の印紙税は国税庁の一覧表(令和8年4月1日現在)の第3号文書で、10万円未満は非課税です。分割譲渡の子債権は1円以上とし、原債権の金額以上にはできません。
原文:でんさいネット「ご利用の流れ」・よくあるご質問 ID:23・ID:30・ID:34・ID:155・国税庁 No.7140。
利用規模は手形の何倍か:統計で比べる
でんさいネットは毎月の取扱高を公表しています。全銀協も、電子交換所で交換された手形の枚数と金額を公表しています。手形の統計が2026年8月分までなので、直近12か月を2025年9月〜2026年8月にそろえて比べました。
| 期間 | 項目 | でんさい(発生記録) | 手形(電子交換所) |
|---|---|---|---|
| 直近12か月 2025年9月〜2026年8月 |
金額 | 51.1兆円 | 7.8兆円 |
| 件数・枚数 | 約1,046万件 | 約374万枚 | |
| 前の12か月 2024年9月〜2025年8月 |
金額 | 47.4兆円 | 17.0兆円 |
| 件数・枚数 | 約904万件 | 約786万枚 | |
| 前の12か月との比較 | 金額 | +7.9% | −54.2% |
| 件数・枚数 | +15.7% | −52.4% |
前提:でんさいは「発生記録請求」の合計で、債権が新しくできた件数と金額です。手形は電子交換所の「手形」の欄(他行宛と行内分の合計)で小切手などは含みません。数え方が違うので、規模の桁をつかむための比較です。
原文:でんさいネット「統計情報」(2026年10月15日付のCSV)、全国銀行協会「手形交換高などの交換所統計」。
最新の2026年9月は発生記録が868,956件(3兆9,714億円)で、月末の残高は約14.95兆円でした。利用者登録は585,095社で利用契約は788,973件です。
手形は電子交換所の開業後に減っており、2026年8月の手形は105千枚(2,065億円)でした。同じ月にでんさいは4兆3,600億円が新たに発生しています。

譲渡や割引をしたあと、支払われなかったら
でんさいは「譲渡すれば責任から離れる」と考えている人が少なくありません。実際は逆で、でんさいネットは手形を裏書した人が原則として遡求義務を負うのと同じ仕組みにしています。
でんさいを譲渡するときは、特に断らないかぎり、譲渡人を電子記録保証人とする保証記録が一緒に記録されます(譲渡保証記録)。
- 保証記録をつけない譲渡もできる。ただし譲受人が譲渡人の保証を求めない場合だけで、保証なしの譲渡を扱わない金融機関もあります。
- 保証は独立している。電子記録債権の保証は手形保証と同じく、もとの債務が無効でも保証債務は残ります。
- 債務者を保証する単独保証記録もある。こちらは債権者が請求し、5銀行営業日以内に保証人になる人の承諾が必要です。
割引はどうでしょうか。でんさいネットは、でんさいの割引を「各金融機関がそれぞれの判断のもと独自に提供するサービス」としています。各金融機関の取扱い状況は把握していないとも書いています。
割引できるかと割引料の額は、窓口の金融機関に聞かないと分かりません。でんさいライトで割引に出せるかも金融機関ごとに違います。
割引に出すと譲渡記録の手数料もかかります(後の表)。手形割引との費用の比較は手形廃止の記事に計算があります。
割引や譲渡で保証記録が付くかどうかは金融機関の取扱いによるため、原文では確かめられませんでした。割引に出す前に保証記録の有無と支払不能になったときの扱いを書面で聞いておくと確実です。
割引と似た資金化の方法は売掛債権担保融資保証制度にまとめています。
原文:でんさいネット よくあるご質問
ID:38・ID:39・ID:41・ID:45・ID:147。

手数料は、手形の印紙税と比べて高いか安いか
でんさいネットの利用料金は窓口の金融機関が決めています。でんさいネットは「発生記録手数料は1件当たり数百円、入金手数料は無料から数百円の例が多い」と案内しています。
公表されている3つの料金表から、支払う側が1通ごとに負担する額を手形の印紙税と並べました。
| 1通の金額 | 手形の印紙税 | でんさいライト(発生記録) | 三井住友銀行(当行/他行) | 第四北越銀行(当行/他行) |
|---|---|---|---|---|
| 5万円 | 非課税 | 264円 | 440円/770円 | 330円/660円 |
| 50万円 | 200円 | 264円 | 440円/770円 | 330円/660円 |
| 100万円 | 200円 | 264円 | 440円/770円 | 330円/660円 |
| 300万円 | 600円 | 利用不可(上限100万円) | 440円/770円 | 330円/660円 |
| 月20通・各50万円 | 4,000円 | 5,280円 | 8,800円/15,400円 | 6,600円/13,200円 |
前提:支払う側が発生記録を請求する場合の1通あたりの税込額。「当行/他行」は受取人の決済口座が当行か他行かで分かれる料金です。でんさいライトは、債務者側で1件100万円までの上限があります。手形の用紙代・郵送代・保管の手間は含めていません。両行のページには「2019年10月現在」「2021年1月1日現在」と表示されたままで、現在の料金は各行で確かめてください。
原文:でんさいネット「でんさいライト」・三井住友銀行「SMBCでんさいネット ご利用料金」・第四北越銀行「でんさいサービス利用手数料」・国税庁 No.7140。
印紙税だけを見ると、100万円以下の手形の200円よりでんさいの発生記録のほうが高く出ます。手形には用紙代や郵送代と保管・取立ての手間もかかります。会社で違うので表には入れていません。
- 受け取る側にも手数料がかかる。入金時の手数料は三井住友銀行も第四北越銀行も1件220円です。
- 割引や譲渡にもかかる。譲渡記録はでんさいライトで132円、三井住友銀行で330円/550円、第四北越銀行で220円/330円です。割引・担保のための譲渡も対象です。
- 支払不能になっても課金される。三井住友銀行の料金表には、決済資金が入金されなかった場合も決済手数料がかかると書かれています。
- 取適法の対象取引では支払側の負担になる。取適法(2026年1月1日施行)の対象取引では、債務者請求方式の発生記録手数料を委託事業者が負担し、代金から差し引けません。詳しくは取適法の記事にあります。
支払不能と取引停止処分:件数と、譲渡できない期間
でんさいには、手形の不渡処分にあたる制度があります。支払期日に支払われなかった(支払不能)でんさいは、全参加金融機関に通知されます。
同じ債務者の支払不能が6か月以内に2回以上になると取引停止処分です。債務者としてのでんさいの利用と、参加金融機関との貸出取引が2年間禁止されます。
| 項目 | 直近12か月 2025年9月〜2026年8月 |
前の12か月 2024年9月〜2025年8月 |
|---|---|---|
| でんさいの発生記録 | 10,456,288件 | 9,036,481件 |
| 支払不能でんさい | 1,349件(31.5億円) | 612件(13.2億円) |
| でんさいの取引停止処分 | 97件 | 38件 |
| 手形の取引停止報告 | 326件 | 419件 |
前提:支払不能の件数を同じ12か月の発生記録で割ると0.0129%(1万件あたり約1.3件)です。支払期日は発生の数か月後なので厳密な不能率ではありません。手形は全銀協の統計にある取引停止報告の件数で、数える単位がでんさいと同じとは限りません。支払不能が増えた理由は公表資料から分かりません。
原文:でんさいネット「統計情報」・全銀協「手形交換高などの交換所統計」・でんさいネット よくあるご質問 ID:67・ID:68。
- 手形の不渡と合算しない。手形の不渡1回とでんさいの支払不能1回が6か月以内にあっても、取引停止処分にはなりません。
- 同じ日の複数は1回。同じ支払期日に複数のでんさいが支払不能になっても、回数は1回と数えます。
- 処分中も債権者としては使える。債務者としての利用だけが2年間止まります。窓口の金融機関が利用契約を解除する場合もあります。
- 取引停止処分は共済の請求に関わる。でんさいネットの取引停止処分は、倒産防止共済の「倒産」の定義にも含まれます(経営セーフティ共済)。
期日の前後には、記録できない期間があります。でんさいネットが示す2023年8月31日(木)期日の例で整理します。
| できること | 期限・できない期間 | 期日8月31日の例 |
|---|---|---|
| 債務者が発生記録を請求 | 期日の3銀行営業日前まで | 8月28日(月)まで |
| 債権者の請求など、機能改善前の金融機関 | 期日の7銀行営業日前まで | 8月22日(火)まで |
| 譲渡・分割譲渡 | 期日の2銀行営業日前から、期日の後3銀行営業日を経過する日まで不可 | 8月29日(火)〜9月4日(月) |
| 支払いが届いたか確認 | 期日から3銀行営業日を経過した日に「支払等記録」がされる | 当日は確認できない |
前提:2023年8月は祝日がなく、土日だけを除いて数えた例です。2023年1月の機能改善に対応していない金融機関では、譲渡できない期間が期日の6銀行営業日前からになります。
原文:でんさいネット よくあるご質問 ID:25・ID:34・ID:170。
期日の直前に割引や譲渡で資金化しようとしても、この期間は使えません。資金が要る日から逆算して早めに手続きします。
取引先が使っているかを調べる:始める前の手順
取引先にでんさいを提案する前に、相手が利用者かどうかを「お取引先でんさい利用状況検索サービス」で調べられます。
対象は法人だけで、個人事業主は検索できません。検索から外す申出をした法人は表示されず、結果が出ないことが利用していない保証にもなりません。
- 利用者番号は9桁。法人1つ(個人事業主は1人)に1つで、複数の金融機関を使っても同じ番号です。
- でんさいライトなら銀行のネットバンキングが不要。初期費用と月額の基本手数料はなく、1件ごとの手数料だけです。債務者側は1件100万円まで、受取や譲渡で使う場合は上限がありません。
- ライトが使える金融機関は限られる。審査のあと、登録から1週間程度で利用開始の通知が届きます。消費者としての個人は使えません。
ライトでも、決済の方法は通常のでんさいと同じです。債務者は期日までに決済口座へ入金しておく必要があります。
資金繰り表に反映する方法は資金繰り表の作り方、融資の形で借りる場合の違いは融資の形態の違いで扱っています。
原文:でんさいネット「お取引先でんさい利用状況検索サービス」・同「でんさいライト」/よくあるご質問 ID:8・ID:506・ID:514・ID:570。
よくある質問
でんさいを譲渡すると、支払われなかったときに譲渡した側も責任を負いますか
原則として負います。譲渡のときは特に断らないかぎり、譲渡人を電子記録保証人とする保証記録が一緒に記録されます。保証なしで譲渡できるのは譲受人が保証を求めない場合だけです。
でんさいは必ず割引できますか
必ずではありません。でんさいの割引は各金融機関が独自の判断で提供するサービスで、取扱いの有無も条件も金融機関ごとに違います。でんさいライトでも同じです。
でんさいの手数料は、誰がいくら払いますか
窓口の金融機関が決めています。三井住友銀行では支払う側の発生記録が440円/770円、受取側の入金が220円です。でんさいライトの発生記録は264円で、債務者側は1件100万円までです。
取引先がでんさいを使っているか、調べられますか
法人なら調べられます。でんさいネットの検索サービスで法人名から探せます。個人事業主は対象外で、結果が出ないことが利用していない証明にはなりません。
まとめ
- 直近12か月の発生記録は51.1兆円で、電子交換所の手形(7.8兆円)の約6.6倍
- 譲渡すると原則として譲渡人が保証人になり、割引の可否は金融機関ごとに違う
- 100万円以下の手形の印紙税200円に対し、でんさいの発生記録は264〜770円の例がある
- 支払不能は6か月以内に2回で取引停止処分(2年間)。直近12か月は97件
- 期日の2銀行営業日前から3銀行営業日後までは譲渡できない
この記事の調べ方
- でんさいネットの統計CSV(2013年2月〜2026年9月)と全銀協の電子交換所の統計(2022年11月〜2026年8月)を取得し、直近12か月と前の12か月を足し上げて比べました。
- 仕組み・保証・取引停止処分・日程は、でんさいネットの公式ページとよくあるご質問から転記しました。手数料はでんさいライトと2行の公表ページ、印紙税は国税庁の一覧表で計算しました。
- 割引料の水準と割引時の保証記録の扱いとほかの金融機関の料金は、公式の資料で確かめられなかったため載せていません。
このページについて
本ページは一般的な情報提供を目的としたもので、個別の融資・税務・法律に関する助言ではありません。
手数料・割引の可否と条件・保証記録の扱いは、取引する金融機関によって異なり、変更されることがあります。利用前に窓口の金融機関とでんさいネットの公式情報をご確認ください。
記載した計算例は説明のための単純化した試算です。



