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要点まとめ
- 赤字だから融資は無理、とは限りません。日本の法人の61.0%は税務上の欠損法人です(令和5年度分)。見られるのは赤字かどうかより赤字の中身と返済の原資がいくら残るかです。
- 同じ赤字でも設備投資の減価償却や一過性の特別損失による赤字は、足し戻すと返済能力が残っていることを数字で示せます。仮設例だと債務償還年数は4〜5年台。これに対して本業の赤字は足し戻すものがなく、改善計画が先に来ます。
- 公庫のセーフティネット貸付は「損失が出ている」ことを利用条件に含む制度です。「2期連続なら無理」といった線は公式にはありません。決算を締める前に数字を持って金融機関に相談するのが、いちばん打てる手の多い時期です。
決算が赤字になると「次の融資はもう受けられないのでは」と不安になるものです。
ネットでは「2期連続の赤字までなら」「3期連続なら絶望的」といった線引きも目にします。
でもそうした基準は公的な資料のどこにも書かれていません。
かつて金融機関の判断の物差しだった金融検査マニュアルは、2019年(令和元年)12月18日に廃止されています。
今は金融機関それぞれの判断と借り手との対話が重く見られます。
ここでは公表資料で確かめられる範囲に絞って
赤字の中身を分ける → 返済能力を計算する → 使える公的制度の要件に当てる → 決算前後の動き方の順にまとめました。
まず確認:赤字の会社は少数派ではない
国税庁の会社標本調査では令和5年度分の全法人295万6,717社のうち、欠損法人は180万3,203社(61.0%)でした。
割合は令和3年度61.7%、4年度61.1%、5年度61.0%とほぼ横ばいです。過去最大は平成21年度の72.8%でした。
ただしこの数字は「会計上の赤字決算の会社の割合」ではありません。
国税庁の定義だと欠損法人は所得金額が負または0の法人で、繰越欠損金を控除した結果、所得が0になった法人も含みます。
決算が黒字でも過去の赤字を繰り越して税務上の所得が0になった会社まで数えているので、会計上の赤字の割合より高めに出ます。
「6割が赤字だから大丈夫」とまでは言えません。それでも赤字の決算書を持って相談に来る会社は珍しくないのは確かです。
自社の赤字はどれか:損益計算書のどの段で赤字か
ひと口に「赤字」といっても、損益計算書のどの段がマイナスかで説明すべきことはまるで違います。
決算書の各段の意味は決算書の読み方にまとめています。
| どこが赤字か | 何を意味するか | 説明の中心 |
|---|---|---|
| 営業利益がマイナス | 本業で稼げていない | 売上・粗利・固定費のどこを、いつまでに、どう直すか(改善計画) |
| 営業利益は黒字、経常利益がマイナス | 本業は黒字でも支払利息などの負担が重い | 借入の総額と金利。借換えや返済条件の見直しの余地 |
| 経常利益は黒字、税引前当期純利益がマイナス | 特別損失(災害・売却損・減損など)による赤字 | その損失が一度きりであることの裏づけ |
融資の審査で重く見られやすいのは上の段のほうです。本業の赤字は最も説明が難しく、特別損失だけによる赤字は最も説明しやすいと思っておいてください。
審査全体で見られる項目は銀行融資の審査項目に書いています。

赤字の中身で、返済能力はこう変わる(4つの仮設例)
金融機関が知りたいのは赤字の年でも借入を返すお金が残っているかです。
当サイトの審査項目や格付けの記事と同じように、次の2つの式で計算してみます。
使う式
返済原資 = 税引後当期純利益 + 減価償却費(減価償却費は現金が出ていかない費用なので足す)
債務償還年数 = 実質有利子負債(借入金 − 現預金)÷ 返済原資(今の稼ぎで借入を返し終えるのに何年かかるか)
4社とも借入金4,000万円・現預金1,200万円(実質有利子負債2,800万円)で規模は同じ。違うのは赤字の原因だけとします。
「足し戻し」は来期は発生しないと資料で説明できる費用だけを戻した場合の数字です。
| 赤字の原因 | 税引前利益 | 決算書のままの返済原資 | 債務償還年数 | 足し戻すもの | 足し戻し後の返済原資 | 債務償還年数 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| A 設備投資の初年度 (減価償却費900万円) |
−210万円 | 690万円 | 4.1年 | なし(減価償却費はもともと足す) | 690万円 | 4.1年 |
| B 一過性の特別損失 (経常利益+500万円、特別損失800万円) |
−300万円 | −80万円 | 計算できない | 特別損失800万円 | 570万円 | 4.9年 |
| C 役員報酬の上げすぎ | −160万円 | 60万円 | 46.7年 | 来期から減らす役員報酬600万円 | 528万円 | 5.3年 |
| D 本業の不振 (営業利益−400万円) |
−460万円 | −240万円 | 計算できない | なし | −240万円 | 計算できない |
※ 当サイトの試算。前提:減価償却費はA以外220万円、支払利息など営業外の純額は−60万円。赤字の期の法人税等は0円、足し戻した後に利益が出る場合は実効税率30%と仮定。金額は万円未満を四捨五入。
「足し戻し後」は説明用の試算です。金融機関がこのとおりに評価するとは限りません。
表から読み取れることは3つあります。
- A(減価償却による赤字)は、決算書のままでも返済原資が690万円残っています。赤字の額だけ見ると不安になりますが、お金の出入りで見れば返す力があると示せる赤字です。設備投資の中身と、いつから売上につながるかを添えて説明します。
- B(特別損失)とC(役員報酬)は、足し戻すと4〜5年台に収まります。とはいえ足し戻しを認めてもらうには「一度きり」「来期から変える」ことの裏づけが欠かせません。Bなら被災の証明や売却の契約書です。Cなら株主総会や取締役会で報酬を改定した議事録です。
- D(本業の不振)は、足し戻すものがありません。必要なのは数字の見せ方ではなく何年で黒字に戻すかの改善計画です。計画期間の公的な目安は次の章にまとめました。
代表者の報酬について、金融庁は「検査マニュアル廃止後の融資に関する検査・監督の考え方と進め方」の別紙【中小零細企業等への貸出】で中小零細企業の評価では「代表者等の役員に対する報酬の支払状況」や代表者の資産などを総合的に勘案するとしています。
役員報酬で利益を調整している会社は、それを隠すより数字で説明したほうが伝わります。
債務償還年数の考え方は銀行の格付け(債務者区分)でもくわしく扱いました。
1期赤字・2期連続・債務超過で使える公的制度の要件
続いて、赤字の会社が使える公的な制度の利用条件そのものを並べます。
どれも審査はあります。ただ赤字であることが最初から想定されている制度です。
| 制度 | 赤字との関係(公式の記載) | 主な条件 |
|---|---|---|
| 日本政策金融公庫 経営環境変化対応資金(セーフティネット貸付) 国民生活事業 |
利用できる方の条件に、「赤字幅が縮小したものの税引前損益または経常損益で損失を生じている方」、前期が損失で最近期は利益が増えたが繰越欠損金が利益準備金・任意積立金などの合計を上回る方、前期が損失で最近期は利益が増えたが債務償還年数が15年以上の方が含まれる | 外的要因による一時的な業況悪化で中長期的には回復が見込まれること。ほかに「売上高が5%以上減少」などの条件もあり、いずれかに当たればよい。限度額7,200万円。運転資金は10年以内(据置3年以内) |
| セーフティネット保証5号 (信用保証協会) |
赤字かどうかは要件ではない。要件は、指定業種で最近3か月の売上高等が前年同期比5%以上減少していることなど | 市区町村長の認定が必要。一般の保証とは別枠(無担保保証は8,000万円以内など)。認定を受けても、保証協会や金融機関の審査で希望に沿えない場合があると中小企業庁が明記 |
| 日本政策金融公庫 資本性ローン(挑戦支援資本強化特別貸付) 中小企業事業 |
税引後当期純利益が0円未満の期は、金利が一律0.50%。業績に応じて金利が変わる仕組み | 期限一括償還、無担保・無保証人。金融検査上、自己資本とみなすことができる。対象や事業計画書の提出などの条件がある |
表の条件は2026年9月時点のものです。
公庫の制度全体は日本政策金融公庫の融資制度に、保証協会の仕組みは信用保証協会付融資に書いています。
目を引くのは、公庫のセーフティネット貸付の条件に「債務償還年数が15年以上」という物差しが出てくることです。
前の章の仮設例Cは決算書のままだと46.7年で、この水準を大きく超えています。自社の債務償還年数を計算しておけば、どの条件に当たるかを自分で確かめられます。
何年で黒字に戻す計画なら受け止められやすいか
赤字が続く会社や返済条件を変えた会社について、金融庁の監督指針(令和8年8月版)は計画期間に次の目安を置いています。
| 計画の種類 | 期間の目安(監督指針) |
|---|---|
| 実現可能性の高い抜本的な計画(実抜計画) | 概ね3年後に業況が良好で、財務内容にも特段の問題がない状態になること(企業の規模や事業の特質を考えた合理的な延長は排除しない) |
| 合理的かつ実現可能性の高い経営改善計画(合実計画) | 計画期間が原則として概ね5年以内。5年を超え概ね10年以内でも、進捗が概ね計画どおり(売上高等と当期利益が計画の概ね8割以上)なら可 |
| 中小企業の特例 | 計画が概ね1年以上順調に進んでいれば、実現可能性の高い計画と判断して差し支えない |
この表は金融機関が債権を区分するときの目安です。融資の可否を決める基準ではありません。監督指針自体も「機械的・画一的に適用すべきものではない」と書いています。
公的な物差しは「赤字は何期まで」ではなく「何年で、どの数字まで戻すか」のほうです。
改善計画の書き方は事業計画書の書き方に、返済条件の変更はリスケジュールの実際にまとめています。
赤字と債務超過は、問われることが違う
赤字は1年間の損益の話で、問われるのは「返済の原資がいくら残るか」です。
債務超過は貸借対照表の話(負債が資産を上回っている状態)で、こちらは「何年で解消できるか」が問われます。
赤字でも自己資本が厚ければ債務超過にはなりません。逆に黒字でも過去の赤字が積み重なって債務超過になっていることはあります。
債務超過を解消する計算は債務超過とはで、自己資本の目安は自己資本比率で扱っています。

決算の前後でやること
赤字決算になりそうなら決算を締める前に動き出すほど打てる手が増えます。
| 時期 | やること |
|---|---|
| 決算の前 | 試算表で着地を見込み、赤字の原因がどの段か(前の表)を整理する。メインの金融機関に決算書が出る前に見込みと理由を伝える |
| 決算・申告(原則、事業年度終了の日の翌日から2か月以内) | 青色申告で前期に法人税を納めていれば欠損金の繰戻し還付を検討する。還付請求書は確定申告書と同時に提出する必要がある |
| 決算の後 | 足し戻しの根拠資料(特別損失の証明、役員報酬の改定の議事録など)と改善計画を揃えて相談する |
| 決算から時間がたったら | 決算から時間がたつほど、直近の業績が問われる。月次の試算表で回復の途中経過を示せるようにしておく |
繰戻し還付でいくら戻るか
青色申告の中小企業者等(資本金1億円以下など)は赤字(欠損金)を前の事業年度に繰り戻して前期に納めた法人税の還付を受けられます。
還付額は法人税法80条で計算方法が決まっていて、式にすると次のとおりです。
還付額の式
還付額 = 前期の法人税額 × 当期の欠損金額 ÷ 前期の所得金額
例:前期の所得1,000万円・法人税150万円で当期の欠損金が300万円なら150万円 × 300 ÷ 1,000 = 45万円。
当期の欠損金が前期の所得以上(1,000万円以上)のときは、前期の法人税150万円が上限になります。
前期の数字は仮のものです。使えるかどうかと実際の金額は税理士か税務署に聞いてください。
繰り戻さない場合、欠損金は翌期以降に繰り越して利益と相殺していきます。
繰戻し還付は、赤字の年に現金が戻ってくる数少ない手段です。資金繰りが苦しいときほど申告前に検討する値打ちがあります。
ただ請求は確定申告書と同時なので申告の直前に気づいても間に合うよう、決算前に税理士と相談しておくのが確実です。
相談は「厳しくなりそうな時点」で
金融庁が令和7年に公表した企業アンケート(回答10,474社)を見ると、
経営改善(計画策定)の支援を検討した時期は「業況が厳しくなると予想されるタイミング」と答えた企業が68.4%(n=2,230)でした。
その一方で、事業計画をもとにしたメインバンクからの支援では「計画をもとにした対話は行っていない」が48.8%といちばん多い答えでした。
赤字の会社だけを取り出した集計ではありません。
早めに動く会社は多い一方で、計画をもとに金融機関と話せている会社は半分程度ということです。
赤字の決算書は黙って出すより前の章の計算と改善の見通しを添えて、自分から説明するほうが伝わります。
金融機関に断られたときの立て直し方や、決算書以外で判断される資金調達の手段は
銀行に融資を断られたときにまとめています。
よくある質問
1期だけの赤字なら、融資への影響は小さいですか
一概には言えません。ただ赤字の原因が説明でき、返済原資が残っていれば影響を抑えられます。
設備投資の減価償却や一過性の特別損失による赤字なら、足し戻した返済原資と債務償還年数を見せるのが効果的です。
公庫のセーフティネット貸付のように損失が出ていることを利用条件に含む制度もあります。
2期連続の赤字だと、もう融資は受けられませんか
「2期連続なら不可」という公的な基準はありません。
公庫のセーフティネット貸付の利用条件には「赤字幅が縮小したものの損失を生じている方」も入っています。
問われるのは何年で黒字に戻すかの計画です。金融庁の監督指針では改善計画の期間の目安を概ね5年以内(条件つきで概ね10年以内)としています。
赤字のときに、決算書をよく見せるために数字を調整してもよいですか
事実と違う決算書を作るのはやめておくべきです。
金融機関は何期分もの決算書や試算表、税務申告書を突き合わせて見ています。
工夫できるのは見せ方のほうです。赤字の原因を正しく分けて、足し戻しの根拠資料と改善計画を添えて説明します。
赤字でも法人税を取り戻せる方法はありますか
青色申告の中小企業者等なら、欠損金の繰戻し還付を受けられる場合があります。
当期の欠損金を前期に繰り戻し、前期に納めた法人税の一部か全部を返してもらう制度です。
還付請求書は確定申告書と同時に出さなければならないので、決算前に税理士に相談しておいてください。
まとめ
- 日本の法人の61.0%は税務上の欠損法人(令和5年度分)。繰越欠損金で所得0の法人も入っているので、会計上の赤字の割合とは違う
- 赤字は損益計算書のどの段かで説明が変わる。本業の赤字がいちばん難しく、特別損失だけの赤字がいちばん説明しやすい
- 返済原資(税引後利益+減価償却費)と債務償還年数を出しておく。仮設例だと減価償却・特別損失・役員報酬による赤字は4〜5年台で、本業の不振は計算できない
- 公庫のセーフティネット貸付は損失が出ていることを条件に含む。5号保証は赤字を問わず売上5%減など。資本性ローンは赤字の期は金利0.50%
- 「何期まで」ではなく「何年で戻すか」。監督指針の目安は実抜計画が概ね3年、合実計画が概ね5年(条件つきで10年)
- 前期に法人税を納めていれば繰戻し還付を検討。請求は確定申告書と同時
- 相談は決算を締める前に数字と改善の見通しを持って
調べ方について
- 制度の条件は日本政策金融公庫・中小企業庁・金融庁・国税庁の公式ページと法令(e-Gov)の原文にあたりました(2026年9月時点)。
- 欠損法人の割合と金融庁アンケートの数値は公表資料から書き写し、割合は当サイトで計算し直しています。
- 4つの仮設例と繰戻し還付の金額は当サイトの試算です。計算式と前提は表の下に書いています。
- ネットでよく見る「2期連続なら不可」「3期連続で絶望的」といった線引きや廃止済みの金融検査マニュアルの基準は、公的な根拠が見当たらないので使っていません。
このページについて
本ページは一般的な情報提供を目的としたもので、個別の融資・税務に関する助言ではありません。
融資の可否と条件は各金融機関の審査で決まります。制度の利用条件は変わることがあるので、申込前に各機関の公式情報をご確認ください。
記載した計算例は説明のための単純化した仮設例です。







