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要点まとめ
- 同じ500万円を5年で返すと、払う利息と保証料の合計はマル経融資の約38万円から法律上の上限金利15%の約214万円まで5.7倍の差になります(当サイトの試算)。東京都の制度融資は保証料がいちばん高い区分でも約49万円で、公庫の基準利率の下限(約50万円)より安く済みます。
- 日本政策金融公庫の国民生活事業では令和6年度の融資件数の44.9%が個人でした。1先あたりの平均融資残高は822万円。個人事業主がまず当たる候補です。
- 金利は上がっています。マル経融資は2.90%(令和8年9月1日現在)で、東京都の制度融資は10月1日から上限金利を0.25%引き上げました。1%台の数字が書かれた解説は古い情報かもしれません。
総額を比べたい方は借入先別の総コスト表へ。自分がどこに当たるか知りたい方は状況別の判定表からどうぞ。
個人事業主が事業資金を借りる先には日本政策金融公庫(以下、公庫)・自治体の制度融資・銀行や信用金庫・貸金業者のビジネスローンなどがあります。
選択肢を並べた解説はよく見かけます。でも「同じ金額を借りたら結局いくら払うのか」を同じ条件で計算したものはほとんどありません。
そこで公式の利率・保証料率だけを使って500万円・5年の総コストを借入先別に計算してみました。
公庫の統計で個人事業主がどのくらい借りているか、確定申告書で何を確かめられるか、状況ごとにどこから当たればいいかもあわせて書いています。
個人事業主は公庫の主要な利用者:融資件数の44.9%が個人
「公庫は法人向けで個人事業主には敷居が高い」と感じる方もいますが、公表されている数字は逆です。
公庫の国民生活事業では令和6年度の融資件数の44.9%が個人で、51.6%が資本金1,000万円以下の法人でした。
従業者4人以下の事業者が71.8%を占めます。
| 項目(令和6年度末) | 公庫 国民生活事業 | 信用金庫計(254金庫) | 国内銀行計(130行) |
|---|---|---|---|
| 融資先数 | 115万先 | 124万先 | 218万先 |
| 1先あたりの平均融資残高 | 822万円 | 4,420万円 | 1億1,836万円 |
| 公庫と比べた平均残高 | 1倍 | 5.4倍 | 14.4倍 |
国内銀行は中小企業向けの数値で、倍率は当サイトの計算。個人44.9%は普通貸付と生活衛生貸付(直接扱)の件数の内訳です。
公庫は融資実績の約9割が1,000万円以下、全体の9割以上が無担保と公表しています。
平均残高で比べると信用金庫は公庫の5.4倍、国内銀行は14.4倍です。数百万円単位の無担保の借入は公庫がいちばん多く扱っている領域です。
公庫の窓口や制度の全体像は日本政策金融公庫の融資制度にまとめています。
開業直後の人はいくらをどこから調達しているか
公庫総合研究所の「2025年度新規開業実態調査」(開業後1年以内の融資先、回答2,165社、個人企業57.0%)によると
開業費用は平均975万円、中央値600万円でした。資金調達額は平均1,219万円で、内訳は次のとおりです。
| 調達先 | 平均額 | 割合 |
|---|---|---|
| 金融機関等からの借り入れ(公庫・民間金融機関・制度融資など) | 827万円 | 67.9% |
| 自己資金 | 279万円 | 22.9% |
| 配偶者・親・兄弟・親戚 | 53万円 | — |
| 友人・知人等 | 41万円 | — |
| その他 | 19万円 | — |
| 合計 | 1,219万円 | — |
割合は公表値です。調査対象は公庫が融資した開業1年以内の企業なので、開業から数年たった事業者の平均ではありません。
よく「自己資金は3割あると有利」と言われます。ところが公庫の新規開業・スタートアップ支援資金の公式ページに自己資金の割合の条件は書かれていません。
調査の平均でも自己資金は調達額の22.9%です。創業融資の条件は創業融資の自己資金要件で詳しく扱っています。

最新の公式利率とよく見かける古い数字
2026年は公的な融資の金利も上がっています。まずは個人事業主がよく使う制度の2026年9月時点の公式利率から。
| 制度 | 利率(年) | 主な条件 |
|---|---|---|
| 公庫 一般貸付(基準利率・無担保) 税務申告を2期終えている |
3.80〜5.40% | 運転資金4,800万円・5年以内(特に必要な場合7年以内)、設備資金10年以内 |
| 同(基準利率・無担保) 税務申告を2期終えていない |
3.75〜5.35% | 新規開業・スタートアップ支援資金(事業開始後おおむね7年以内、7,200万円)も基準利率が基本 |
| 同(特別利率E・無担保・2期済) | 2.40〜4.00% | 制度ごとに定められた要件に当たる場合 |
| マル経融資(特別利率F) | 2.90% | 商工会議所・商工会の推薦。2,000万円・10年以内、無担保・無保証人 |
| 東京都 小口 フリーランス (固定・3年超5年以内) |
3.00%以内 | 都内の小規模企業者。2,000万円・運転7年以内。信用保証料の1/2を都が補助 |
東京都の3.00%は要項の上限2.75%に、10月1日以降の受付分からの一律0.25%の引上げを当サイトで足した値です。公庫の利率は金融情勢で変わり、実際の金利は審査で決まります。
ネット上の解説には金利が上がる前の数字がそのまま残っているものもあります。公式の現行値と並べてみました。
| よく見かける記載 | 公式の現行値・記載(2026年9月時点) |
|---|---|
| マル経融資の金利は1.21% | 2.90%(令和8年9月1日現在)。500万円・5年なら利息は155,295円から377,286円に増え、差は221,991円(当サイトの試算) |
| 公庫の創業向け融資の金利は2%前後 | 新規開業・スタートアップ支援資金は基準利率が基本で、2期未了・無担保なら3.75〜5.35%。2%台は特別利率に当たる場合 |
| 公庫の返済期間は5年以上 | 一般貸付の運転資金は5年以内(特に必要な場合7年以内)。設備資金は10年以内 |
| 開業資金の平均は941万円 | 2025年度調査では平均975万円・中央値600万円 |
| 自己資金は3割程度が必要 | 公庫の公式ページに自己資金の割合の条件の記載はない。調査の平均は22.9% |
| 制度融資は1%台で借りられる | 東京都は令和8年度の開始時に上限金利を+0.25%し、10月1日からさらに+0.25%。自治体と年度で大きく違う |
東京都の令和8年度開始時の改定は令和8年3月27日に発表されたものです。
利息の試算は500万円・60回・元利均等で、前提は次の章の表の下に書いています。
同じ500万円・5年で借入先ごとに総額はいくら違うか
ここからが本題です。500万円を5年(60回)で返すという同じ条件で借入先ごとに払う利息と保証料を計算しました。
金利は上の表の公式値(範囲があるものは下限と上限)です。
| 借入先(金利) | 毎月の返済 | 利息の総額 | 保証料(自己負担) | 利息+保証料 |
|---|---|---|---|---|
| マル経融資(2.90%) | 89,621円 | 377,286円 | なし | 377,286円 |
| 東京都 小口 フリーランス(上限3.00%) | 89,843円 | 390,607円 | 20,625〜94,875円 | 411,232〜485,482円 |
| 公庫 基準利率・2期済(3.80〜5.40%) | 91,632〜95,275円 | 497,921〜716,512円 | なし | 497,921〜716,512円 |
| 公庫 基準利率・2期未了(3.75〜5.35%) | 91,520〜95,160円 | 491,175〜709,601円 | なし | 491,175〜709,601円 |
| 貸金業者の事業者向けローン (利息制限法の上限15%) |
118,950円 | 2,136,979円 | — | 2,136,979円 |
※ 当サイトの試算。前提:借入500万円・60回・毎月返済・据置なし・元利均等返済、月利=年利÷12、利息の総額は円未満四捨五入。
東京都の保証料は東京信用保証協会の料率表(責任共有制度の対象外・東京都制度融資・500万円以下)の区分9(0.30%)〜区分1(1.38%)で、保証料=500万円×料率×60÷12×分割係数0.55(円未満切捨て)を計算し、都の1/2補助を引いた額。
15%は特定の商品の金利ではなく元本100万円以上に適用される利息制限法の上限です。事務手数料などは含みません。
元金均等返済なら利息はやや少なく、マル経368,542円・公庫3.80%で482,917円・15%で1,906,250円です。
表から読み取れることは3つあります。
- いちばん安いのはマル経融資で、保証料もかかりません。ただ商工会議所・商工会の経営指導を原則6か月以上受けていることなどが推薦の条件なので、今すぐ必要な資金には間に合わないことがあります。
- 東京都の制度融資は保証料を払っても公庫の基準利率より安くなりえます。保証料がいちばん高い区分1でも総額485,482円で、公庫の基準利率の下限(497,921円)より低い額です。都の金利は「以内」の上限なので実際はこれより低いこともあります。
- 法律上の上限金利で借りると利息だけで約214万円。マル経の5.7倍です。毎月の返済も29,329円重くなります。急ぎのつなぎに使うなら期間を短く区切るのが前提です。
保証料は一括で払う場合だけ都の補助の対象で、分割で納める場合は補助の対象外です(東京都の要項 総則)。
保証料の仕組みと実質金利の考え方は信用保証協会付融資で詳しく書いています。
ファクタリングは借入ではなく手数料の公的な統計も見当たらないので、この表には入れていません。仕組みと注意点はファクタリングの解説をご覧ください。
月々の返済は売上からではなく経費と生活費を払った後に残るお金から出すものです。
借りる額を決める前に運転資金の計算と損益分岐点で、返済を含めて必要な売上を確かめておくと安全です。
確定申告書で確かめられること
個人事業主には法人のような決算書がないので、確定申告書とその添付書類が事業の成績を示す書類という扱いです。
公庫のインターネット申込では個人営業の方は「最近2期分の確定申告書(一式)」を出します。青色申告なら青色申告決算書、白色申告なら収支内訳書も含みます。
税務申告が1期だけなら1期分で、事業を始めたばかりで申告前なら提出は要りません。
| 書類 | 何が書いてあるか | 関係する公式の条件・扱い |
|---|---|---|
| 確定申告書 | 事業所得の金額・所得税の額 | 貸金業者で消費者として借りる場合は事業所得(総収入金額−必要経費)のうち安定したものが総量規制の「年収」になる(日本貸金業協会) |
| 青色申告決算書 (損益計算書) |
売上(収入)金額・仕入・減価償却費などの経費・所得金額 | 公庫の提出書類に含まれる。減価償却費は現金が出ていかない費用なので返済の元手を説明するときに使える |
| 青色申告決算書 (貸借対照表) |
事業用の資産と負債 | 55万円・65万円の青色申告特別控除では添付が要件(国税庁)。信用保証料の料率区分は貸借対照表と損益計算書から判定し、貸借対照表がなければ区分5(東京信用保証協会の料率表 注3) |
| 収支内訳書(白色申告) | 収入金額と必要経費の内容 | 公庫の提出書類に「白色申告の方は収支内訳書を含む」と明記されている。白色申告でも申し込める |
| 納税証明書・領収書 | 所得税・事業税・住民税の納付 | マル経融資は税金の完納が推薦の条件。東京都の制度融資も租税の未申告・滞納がないことが基本要件(完納の見通しが立つ場合などを除く) |
各機関がどの欄をどう評価するかは公表されていません。この表は公式に求められる書類と、そこに書かれている内容を対応させたものです。
個人事業主が見落としやすいのは貸借対照表の有無が保証料の区分に関わる点です。
区分5は9区分の真ん中で、東京都の制度融資(責任共有制度の対象・500万円以下)なら0.70%。財務内容がよい事業者なら貸借対照表を作っておいたほうが有利になるかもしれません。
もう一つは節税のために所得を小さくすると、申告書の上では返済の元手も小さく見えることです。
金融機関が見る書類全体の考え方は銀行融資の審査項目に、決算書の読み方は決算書の読み方に書きました。赤字の申告なら赤字決算でも融資は受けられるかも参考になります。

状況別:どこから当たるか
最後に公式の利用条件をもとに、状況ごとに最初に確かめる先を表にしました。どれも審査があるので、条件に当たっても借りられるとは限りません。
| 状況 | 最初に確かめる先 | 公式の主な条件 |
|---|---|---|
| 開業前か開業からおおむね7年以内 | 公庫 新規開業・スタートアップ支援資金 | 適正な事業計画があり遂行能力があると認められること(創業計画書などで確認)。7,200万円・運転10年以内。女性・35歳未満・55歳以上などは特別利率 |
| 商工会議所・商工会の地区で1年以上営業し、従業員20人以下(商業・サービス業は5人以下) | マル経融資 | 経営指導を原則6か月以上受けていること・税金の完納・商工業者であること。2,000万円・10年以内、無担保・無保証人 |
| 東京都内の小規模企業者で、保証協会付の借入が合計2,000万円以下 | 東京都 小口 フリーランス | 2,000万円・運転7年以内・原則無担保・保証料1/2補助。商工会議所等の経営指導を直近1年以内に6か月以上複数回受けていれば金利0.4%優遇の特例 |
| 都の保証付融資を1年以上約定どおり返済中で、短期の運転資金が必要 | 東京都 クイックつなぎ(小口) | 300万円・2年以内・運転資金。指定金融機関のみで受付 |
| 税金を滞納している | 先に税の猶予を相談 | マル経は完納が条件で、都の制度融資も滞納がないことが基本要件。納税の猶予・社会保険料の猶予を先に |
| 公的な融資が間に合わない・断られた | 貸金業者の事業者向けローン | 事業・収支・資金の計画で返済能力を超えないと認められれば年収の1/3を超えて借りられる(100万円以下は状況が分かる書面で代替可)。金利は元本100万円以上で年15%が上限 |
制度融資の条件は自治体ごとに違います。東京都以外の方はお住まいの都道府県・市区町村の制度をご確認ください。
マル経融資を使いたいなら必要になる半年以上前から商工会議所・商工会の経営指導を受け始めるのが現実的です。
経営指導は東京都の小口の金利優遇の条件にもなっているので、一度の相談で2つの制度の準備が進みます。
公庫の面談で聞かれることは公庫の面談対策に、事業計画の書き方は事業計画書の書き方にまとめました。
返済不要のお金として補助金・助成金もありますが、原則として後払いです(補助金・助成金、補助金のつなぎ融資)。
小規模企業共済に加入している方は小規模企業共済の記事もご覧ください。
公的な融資を断られた後の順番や決算書以外で判断される資金調達の手段は銀行に融資を断られたときにまとめています。
よくある質問
個人事業主でも公庫や銀行から借りられますか
借りられます。公庫の国民生活事業では令和6年度の融資件数の44.9%が個人でした。
1先あたりの平均融資残高は822万円で、融資実績の約9割が1,000万円以下です。数百万円の無担保の借入は公庫が多く扱っている領域です。
白色申告でも融資を受けられますか
申し込めます。公庫の提出書類には白色申告の方は収支内訳書を含む確定申告書を出すと明記されています。
ただ収支内訳書には貸借対照表がありません。信用保証協会の保証料の料率区分は貸借対照表がない場合は区分5になります。
自己資金はどのくらい必要ですか
公庫の新規開業・スタートアップ支援資金の公式ページに、自己資金の割合の条件は書かれていません。
2025年度新規開業実態調査では自己資金は平均279万円で、資金調達額1,219万円の22.9%でした。自己資金の多さよりも事業計画で返済の見通しを示せるかどうかが問われます。
税金を滞納していても借りられますか
公的な融資は難しくなります。マル経融資は税金の完納が推薦の条件で、東京都の制度融資も租税の滞納がないことが基本要件です(完納の見通しが立つ場合などを除く)。
まずは納税の猶予などで納付の計画を立て、そのうえで融資を相談する流れになります。
まとめ
- 公庫の国民生活事業では融資件数の44.9%が個人で、平均融資残高は822万円。個人事業主がまず当たる候補
- 公式利率(令和8年9月1日現在):公庫の基準利率は無担保で3.80〜5.40%(2期未了は3.75〜5.35%)、マル経2.90%。東京都の小口は10月1日から上限3.00%以内
- 500万円・5年の利息+保証料はマル経約38万円、都の小口約41〜49万円、公庫の基準利率約50〜72万円、法律上の上限15%で約214万円
- 確定申告書は2期分が基本。白色申告でも申し込めるが貸借対照表がないと保証料の区分は5
- マル経・都の小口の優遇は商工会議所・商工会の経営指導が条件。半年以上前から準備する
- 税金の滞納があるなら融資より先に猶予の相談
調べ方について
- 利率・保証料率・利用条件は日本政策金融公庫・東京都・東京信用保証協会・日本商工会議所・日本貸金業協会・国税庁の公式ページと、公開されているPDF・法令(e-Gov)の原文で確かめました(2026年9月時点)。
- 公庫の融資先と新規開業実態調査の数値は公表資料から写し、倍率と内訳の合計は当サイトで計算し直しました。
- 総コストの表は当サイトの試算で、計算式と前提は表の下にあります。金利は各制度の公式値の下限・上限で、特定の金融機関の商品金利は使っていません。
- 公式の数値が見つからなかったもの(ファクタリングの手数料の相場・融資の実行までの日数・補助金の採択率など)は使っていません。
このページについて
本ページは一般的な情報提供を目的としたもので個別の融資・税務に関する助言ではありません。
融資の可否と条件は各金融機関の審査によって決まります。利率と制度の利用条件は変わることがあるので、申込前に各機関の公式情報をご確認ください。
記載した計算例は説明のための単純化した試算です。







