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自己資本比率の目安は?業種別の公的データと計算方法、低いときに上げる3つの方法

最終更新日:

要点まとめ

  • 自己資本比率は純資産 ÷ 総資産 × 100。中小企業(法人企業)の全産業加重平均は44.93%で、よく言われる「目安30%」よりかなり高い水準です(令和6年度決算実績)。
  • ただし業種差が大きい指標です。学術研究・専門技術サービス業は66.86%、宿泊業・飲食サービス業は31.01%。比べるべきは全体平均ではなく自社の業種の数字です。
  • 上げる方法は利益を残す・増資する・借入を資本に近づけるの3方向。仮設例では同じ利益でも現金で持つより借入返済に回すほうが到達が1年早くなりました。

自社の業種と比べたい方は業種別の実データから、低くて困っている方は上げる方法からどうぞ。

「自己資本比率は30%以上が目安」とよく言われます。でもその30%がどこから来た数字なのかはあまり説明されません。
実際は業種によって平均が2倍以上違います。同じ30%でも「平均より低い」業種と「平均並み」の業種があるわけです。

そこで中小企業庁が毎年公表している中小企業実態基本調査の最新の集計表から、業種別・規模別の実データを拾いました。
あわせて仮設例を使い、毎年いくら利益を残すと何年で何%になるかを10年分計算しています。

自己資本比率とは(計算式と、決算書のどこを見るか)

自己資本比率は会社の資産のうち、返さなくてよいお金でまかなわれている割合です。
中小企業庁の中小企業実態基本調査はこの指標の算出式を「純資産÷総資本(総資産)×100」と定めています。

自己資本比率(%)= 純資産 ÷ 総資産 × 100

どちらの数字も貸借対照表(BS)に載っています。純資産は右下の「純資産合計」、総資産は左下の「資産合計」です。
貸借対照表は左右の合計が一致するので「負債・純資産合計」を使っても同じ数字になります。
決算書のどこに何が書いてあるかは決算書の読み方にまとめました。

純資産の中身

純資産の部は会社計算規則で株主資本・評価換算差額等・株式引受権・新株予約権に区分されます。中小企業ではほとんどが株主資本です。中身は次の2つが中心になります。

  • 資本金・資本剰余金=株主が出したお金。増資すると増える
  • 利益剰余金=これまでの利益のうち、配当などで社外に出さずに積み上げた分。毎年の当期純利益がここに積み上がる

自己資本比率は「創業以来どれだけ利益を残してきたか」の通信簿でもあるわけです。1年頑張ったくらいで大きく動く指標ではありません。
反対に赤字が続けば利益剰余金が減り、比率はじわじわ下がります。

業種別の自己資本比率を比べるイメージ

業種別・規模別の実データ

ここからが本題です。中小企業実態基本調査の最新の確報(令和6年度決算実績)から産業大分類別の自己資本比率を並べました。
中小企業(法人企業)の加重平均で個人企業は含みません。

業種(産業大分類) 自己資本比率 全産業平均との差
学術研究、専門・技術サービス業 66.86% +21.93pt
情報通信業 54.08% +9.15pt
建設業 49.38% +4.45pt
製造業 49.29% +4.36pt
法人企業 合計(全産業) 44.93% -
卸売業 43.70% −1.23pt
サービス業(他に分類されないもの) 43.43% −1.50pt
小売業 39.43% −5.50pt
不動産業、物品賃貸業 38.38% −6.55pt
運輸業、郵便業 36.86% −8.07pt
生活関連サービス業、娯楽業 31.36% −13.57pt
宿泊業、飲食サービス業 31.01% −13.92pt

いちばん高い学術研究・専門技術サービス業(66.86%)といちばん低い宿泊業・飲食サービス業(31.01%)では35.85ポイントの差があります。
大きな設備や店舗を借入で用意する業種ほど低く出るためで、低いから経営が悪いとは限りません。

従業者規模でも変わる

従業者規模 自己資本比率
5人以下 40.32%
6〜20人 40.66%
21〜50人 47.05%
51人以上 48.35%

規模が小さいほど低くなります。小さな会社ほど利益を積み上げる期間も金額も限られるので自然な傾向です。
従業員5人以下の会社が全産業平均の44.93%と比べて見劣りするのは、比べる相手を間違えているだけかもしれません。

全産業44.93%と産業大分類別の値は調査の概況(主要項目の調査結果)で公表されている数字です。従業者規模別の値と全産業平均との差は、集計表「2.資産及び負債・純資産(法人企業)(1)産業別・従業者規模別表」の純資産と資産合計から当サイトで計算しました。

3年分の推移

中小企業全体の自己資本比率はここ数年上がっています。

決算年度 自己資本比率(全産業) 財務レバレッジ
令和4年度 41.71% 2.40倍
令和5年度 44.40% 2.25倍
令和6年度 44.93% 2.23倍

令和6年度は前年度より0.53ポイント高い水準です。財務レバレッジ(総資産 ÷ 純資産)は自己資本比率の裏返しで、自己資本比率44.93%なら2.23倍。借入で調達している割合が下がってきているのがこの2つの数字から読み取れます。

「目安30%」をどう考えるか

実データを見る限り30%という数字は「最低限のライン」に近いと考えるのが実情に合います。
中小企業全体の平均は44.93%です。30%前後というのは宿泊業・飲食サービス業や生活関連サービス業・娯楽業といった低めの業種の平均にすぎません。

自己資本比率 位置づけ やること
0%未満 債務超過。資産をすべて売っても負債を返しきれない 解消の計画づくりが最優先。公庫や支援機関へ早めに相談
0〜10% 1年の赤字で債務超過になりうる水準 赤字を止めることが先。資産の圧縮も検討
10〜30% 多くの業種の平均を下回る 利益を残して積み上げる。使っていない資産を売る
30〜45% 業種によっては平均並み。自社の業種と比べる 業種平均との差を確認し、方向を決める
45%以上 全産業平均(44.93%)を上回る 手元資金と投資のバランスを見る

この区分は当サイトの整理で、法令や公的機関が定めた基準ではありません。見てほしいのは比率そのものより、前期からの動きと業種平均との差です。
自己資本比率が下がっているなら、赤字か借入・資産の増加のどちらかが起きています。

仮設例:毎年いくら残すと、何年で何%になるか

ここからは説明のための仮設例です。実在の企業ではありません。次のB社で計算します。

項目 金額(千円) 備考
総資産 200,000 年商300,000千円の会社
負債 160,000 うち借入金が中心
純資産 40,000 資本金10,000+利益剰余金30,000
自己資本比率 20.00% 40,000 ÷ 200,000
毎年の当期純利益 6,000 全額を内部留保(配当なし)

「現金で持つ」か「借入を返す」かで変わる

利益を残してもそれをどう使うかで自己資本比率の上がり方が変わります。
現金のまま持つと純資産と一緒に総資産も増え、分母まで大きくなります。借入の返済に充てれば分子だけが増えて分母は変わりません。

経過年数 純資産 ①現金で持つ
(総資産も増える)
②借入を返す
(総資産は200,000のまま)
現在 40,000 20.00% 20.00%
1年後 46,000 22.33% 23.00%
2年後 52,000 24.53% 26.00%
3年後 58,000 26.61% 29.00%
4年後 64,000 28.57% 32.00%
5年後 70,000 30.43% 35.00%
6年後 76,000 32.20% 38.00%
7年後 82,000 33.88% 41.00%
8年後 88,000 35.48% 44.00%
9年後 94,000 37.01% 47.00%
10年後 100,000 38.46% 50.00%

30%に届くのは、①なら5年目、②なら4年目です。
差が開くのはもっと先です。全産業平均の44.93%に届くのは①が16年目、②が9年目。同じ利益を出していても7年の差がつきます。

仮設例にもとづく計算です。売上・総資産・利益が変わらないという単純化した前提で、税金・配当・設備投資は考慮していません。実際には手元資金を減らしすぎると資金繰りが苦しくなるので、返済に回す金額は資金繰りを見ながら決めることになります。

必要な利益から逆算する

目標から逆算することもできます。総資産200,000千円が変わらないとすれば必要な純資産は次のとおりです。

  • 自己資本比率30%に必要な純資産=200,000 × 0.30 = 60,000千円。現在40,000千円なので不足は20,000千円。5年で届かせるなら年4,000千円(年商300,000千円に対し当期純利益率1.33%)
  • 全産業平均の44.93%なら必要な純資産は89,860千円。不足49,860千円で、5年なら年9,972千円(約1,000万円)

「毎年いくら残すか」を金額で決められるのが逆算のいいところです。
月ごとの資金の出入りに落とし込む手順は資金繰り表の作り方にまとめています。

赤字を出すと、どのくらい下がるか

赤字を出せば純資産は減ります。B社が1年で3,000千円の赤字を出すと純資産は37,000千円になり、自己資本比率は18.50%へ1.5ポイント低下します。
上げるには何年もかかるのに、下がるのは1年で十分なんです。

自己資本を積み上げるイメージ

自己資本比率が低いときに上げる方法

上げ方は分子(純資産)を増やすか分母(総資産)を減らすかの2通りしかありません。
同じ30,000千円を動かしたときにB社の自己資本比率がどうなるかを並べてみます。

方法 内容 計算 結果
① 利益を残す 5年かけて30,000千円を積み上げ、借入の返済に充てる 70,000 ÷ 200,000 35.00%
② 増資する 経営者や親族が30,000千円を払い込む(現金が入るので総資産も増える) 70,000 ÷ 230,000 30.43%
③ 役員借入金を純資産に振り替える 役員からの借入金30,000千円を資本金等に振り替える(DES) 70,000 ÷ 200,000 35.00%
④ 資本性借入金にする 借入金30,000千円を資本に準じた条件に組み替える。会計上は負債のまま 40,000 ÷ 200,000 20.00%
(金融機関の評価上は35.00%)
⑤ 使っていない資産を売る 遊休不動産などを売って借入を返し、分母を減らす 40,000 ÷ 170,000 23.53%

同じ30,000千円でも比率の上がり方が違います。②の増資は現金が入るぶん総資産も増えるので、③より上がり幅が小さくなります。
⑤は分母を減らす方法です。効果は限られますがいますぐできるのが強みです。

③ 役員借入金をどう扱うか

中小企業では経営者が会社にお金を貸している「役員借入金」がよくあります。
会計上これは負債で、会社計算規則でも長期借入金は固定負債に区分されます。そのままでは自己資本比率は上がりません。

純資産に振り替える方法としてDES(債務の株式化)があります。役員が持つ貸付金を現物出資して株式を受け取る形で、負債が減って資本金等が増えます。
ただし税務上の論点があり、会社側に債務消滅益が生じる場合があるため実行する前に税理士に相談しておくべきです。

④ 資本性借入金という考え方

金融庁は貸出条件が資本に準じた「十分な資本的性質が認められる借入金」について、債務者の評価で資本とみなして取り扱うことが可能だと監督指針で明確にしています。
資本類似性を判断する観点は次の3つです。

観点 内容
償還条件 償還期間が5年超で、期限一括償還(または同等に評価できる長期の据置期間が設定されていること)
金利設定 配当可能利益に応じた金利設定が原則で業績連動型。厳しい状況にある期間は金利負担が抑えられる仕組み
劣後性 法的破綻時の劣後性が確保されていること、または法的破綻に至るまでの間に他の債権に先んじて回収されない仕組み

役員借入金が自動的に資本とみなされるという公的なルールは確認できません。
実際にどう評価されるかは金融機関しだいです。役員借入金の残高と返済の予定を決算書や説明資料で明らかにしたうえで、取引金融機関に確認するのが確実です。

制度として使える資本性借入金もあります。日本政策金融公庫の挑戦支援資本強化特別貸付(資本性ローン)について、公庫自身が「本制度による債務については、金融機関の資産査定上、自己資本とみなすことができます」と案内しています。
融資限度額は7,200万円(別枠)で、返済期間は5年1か月以上20年以内の期限一括返済です。利率は融資後1年ごとに直近の業績に応じて適用され、税引後当期純利益が0円未満の期間は一律0.50%です(2026年9月時点)。

資本性ローンには対象要件があり、すべての企業が利用できるわけではありません。

金融機関は自己資本比率をどう見るか

自己資本比率だけで融資の可否が決まるわけではありません。ただ決算内容が具体的なコストに結びつく場面は公表資料からも読み取れます。

  • 信用保証料率:東京信用保証協会は中小企業信用リスク情報データベース(CRD)により確定決算内容を評価して料率の区分(9区分)を決定すると説明しています。決算の中身が保証料の金額を左右するということです
  • 財務内容の評価:金融庁は資本性借入金について資本とみなして取り扱うことが可能と明確化しています。裏を返せば金融機関は純資産の厚みを見ているわけです
  • 開示の相手:中小企業庁も中小企業の会計情報の開示先として「取引先、金融機関、同族株主、税務当局等」を挙げています

実務では自己資本比率よりも債務超過かどうかと借入金を利益とキャッシュで返せるかのほうが重く見られることがよくあります。
比率が低くても毎年黒字で借入が減っていれば説明は可能です。反対に比率が高くても赤字続きなら評価は下がります。
銀行に融資を断られたときは、比率そのものより何が理由だったのかを確かめるのが先です。

保証料率の体系は保証協会や制度により異なります。融資や保証の判断基準は公表されていないので、個別の見通しは取引金融機関にご確認ください。

高ければ高いほどよい、とは限らない

自己資本比率が高いこと自体は安全です。ただ高さだけを目標にすると判断を誤ります。

  • 借入を減らしすぎて手元資金が薄くなるのは危険です。会社が行き詰まるのは赤字のときではなく支払うお金がなくなったときです
  • 投資をやめれば比率は上がります。設備を更新せず資産が減っていくだけの「縮小による高比率」は数年後の稼ぐ力が落ちる原因です
  • 比率が高くても資産の中身が不良債権や不良在庫なら実態の純資産はもっと小さくなります

見るべきなのは比率と手元資金の両方です。現金・預金が月商の何か月分あるかと、借入金が月商の何か月分かも一緒に見ておきます。
利益と現金がずれる理由はキャッシュフロー計算書で追えます。

よくある質問

自己資本比率の目安は何%ですか

よく「30%以上」と言われますが、中小企業(法人企業)の全産業加重平均は44.93%です(中小企業実態基本調査 令和7年確報・令和6年度決算実績)。
業種差も大きく、学術研究・専門技術サービス業は66.86%、宿泊業・飲食サービス業は31.01%です。比べる相手は全体の平均ではなく自社の業種の平均です。

自己資本比率はどう計算しますか

純資産 ÷ 総資産 × 100で計算します。どちらも貸借対照表に載っている数字です。純資産は右下の「純資産合計」、総資産は左下の「資産合計」を使います。
中小企業実態基本調査も算出式を「純資産÷総資本(総資産)×100」としています。純資産40,000千円・総資産200,000千円なら20.00%です。

自己資本比率が低いとどうなりますか

返さなくてよいお金の割合が小さいので赤字が出たときに債務超過へ近づきやすくなります。金融機関は決算内容を評価していますし、信用保証協会の保証料率も確定決算の内容から区分が決まります。
とはいえ比率だけで融資の可否が決まるわけではありません。毎年黒字で借入が減っていれば説明はできます。個別の判断は取引金融機関にご確認ください。

役員借入金は自己資本として見てもらえますか

会計上は負債で、会社計算規則でも長期借入金は固定負債に区分されます。役員借入金が自動的に資本とみなされるという公的なルールは確認できません。
金融庁は「資本性借入金」について、償還期間5年超・期限一括償還/業績連動型の金利設定/劣後性という観点から資本類似性を判断し、資本とみなして取り扱うことが可能としています。実際の扱いは金融機関の判断なので、残高と返済予定を示したうえで相談するのが近道です。

まとめ

  • 自己資本比率=純資産 ÷ 総資産 × 100。どちらも貸借対照表に載っている
  • 中小企業(法人企業)の全産業加重平均は44.93%(令和6年度決算実績)。「目安30%」より高い
  • 業種差が35ポイント以上。学術研究・専門技術サービス業66.86%、宿泊業・飲食サービス業31.01%
  • 規模が小さいほど低い(5人以下40.32%、51人以上48.35%)。比べる相手を間違えない
  • 仮設例では利益6,000千円を現金で持つと30%到達は5年目、借入返済に回すと4年目。44.93%到達は16年目と9年目で7年の差
  • 上げる方法は利益を残す・増資する・借入を資本に近づける・遊休資産を売る
  • 役員借入金は会計上は負債。自動的に資本とみなされる公的ルールは確認できない
  • 高ければよいわけではない。手元資金と投資のバランスも併せて見る

このページについて

本ページは一般的な情報提供を目的としたもので、個別の資金調達・会計・税務に関する助言ではありません。
統計値は中小企業庁「中小企業実態基本調査 令和7年確報(令和6年度決算実績)」、制度の内容は2026年9月時点の金融庁・日本政策金融公庫等の公表資料に基づいており、更新されることがあります。
記載した計算例は説明のための単純化した仮設例で、実在の企業のものではありません。
融資や保証の判断基準は公表されていないため、自社の評価については取引金融機関に、増資やDESなどの税務上の取扱いについては税理士にご相談ください。

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