当サイトのコンテンツには、アフィリエイト広告が含まれている場合があります。

介護事業の資金繰り|国保連の支払日と給与日から必要運転資金を計算し、処遇改善加算の立替と公庫の融資条件を整理

最終更新日:

要点まとめ

  • 介護報酬の支払日は国保連ごとに違います。令和8年度の日程を給与日25日と比べると東京は11か月中8か月で入金が給与より先、北海道と宮城は11か月すべてで給与が先です。
  • 厚生労働省の概況調査の平均額で日ごとに計算すると訪問介護の必要運転資金は東京で約318万円、北海道・宮城で約541万円。差の約223万円は給与のちょうど1か月分で、「何か月分」より支払日と給与日の順番で決まります。
  • 処遇改善加算は訪問介護の加算Ⅰイで介護報酬の約21%。全額を賃金改善に回す義務があるので返済の原資には数えられません。令和8年6月の拡充分は8月の入金まで立て替えになります。

自社の必要額を知りたい方は日割りの計算、借入を考えている方は公庫の制度と返済額からどうぞ。

介護事業はサービスを提供してから介護報酬が入るまで約2か月かかるのに、給与は毎月出ていく商売です。
黒字でも手元のお金が足りなくなるのはこのためで、よく「運転資金は2〜3か月分」という目安が語られます。

ところが実際に必要な額は都道府県の国保連が何日に払うかと自社の給与日の順番で大きく変わります。
ここでは厚生労働省・国保連・日本政策金融公庫などが公表している資料だけを使って、必要な運転資金を日付単位で計算しました。

介護事業の収支を数字で見る

厚生労働省の「令和7年度介護事業実態調査(介護事業経営概況調査)」から1事業所あたりの月額(令和6年度決算)を並べます。

サービス 収入 支出 差引 収支差率 給与費の割合
訪問介護 329.0万円 297.3万円 31.6万円 9.6% 67.8%
通所介護 593.5万円 556.4万円 37.1万円 6.2% 60.9%
地域密着型通所介護 272.7万円 255.5万円 17.2万円 6.3% 63.3%

収支差率は税引前で、物価高騰対策関連の補助金は含みません。有効回答は訪問介護638・通所介護433・地域密着型通所介護317です。

支出の6〜7割は給与で、毎月決まった日に全額を払います。一方で収入の大半を占める介護報酬はサービス提供月の翌月10日までに国保連へ請求し、その翌月(提供月の翌々月)に入ります。

介護施設の運営と入金日のイメージ

国保連の支払日は都道府県で違う:給与日の前か後か

よく「翌々月の25日前後」と説明されますが、実際の支払日は国保連ごとに決まっています。
令和8年度の日程が公表されている4つの国保連で、2026年5月〜2027年3月の支払日を給与日25日(休日なら前営業日)と比べました。

国保連 支払日の決め方・実際の日 入金が先 同じ日 給与が先 4月開始の最初の入金
東京都 原則23日(23〜25日) 8か月 3か月 0か月 6月23日
大阪府 24〜26日 7か月 3か月 1か月 6月24日
北海道 26〜29日 0か月 0か月 11か月 6月29日
宮城県 26〜30日 0か月 0か月 11か月 6月29日

支払日は各国保連が公表している令和8年度の日程表によります。月数の集計は当サイト。大阪の「給与が先」は10月(支払26日、給与は25日が日曜のため23日)です。

「翌々月15日に入る」と書いたページも見かけますが、調べた4つの国保連はどれも23日〜月末で15日払いはありませんでした。
4月1日にサービスを始めると、最初の入金まで東京で83日、北海道・宮城で89日かかります。
地元の国保連の年間日程を取り寄せて給与日と同じ表に書き込むことが資金繰り表の出発点です(作り方は資金繰り表の作り方)。

必要な運転資金を日割りで計算する

上の平均額を使って2026年4月1日に平均的な規模でサービスを始めたと仮定し、2027年3月末まで日ごとに残高を計算しました。
残高がいちばん低くなった日の不足額が開業時に用意しておくべき運転資金です。

サービス 東京 大阪 北海道・宮城 給与を翌月末日払いにした場合 参考:支出の2か月分
訪問介護 318万円 397万円 541万円 318万円 595万円
通所介護 606万円 729万円 968万円 606万円 1,113万円
地域密着型通所介護 277万円 347万円 450万円 277万円 511万円

※ 当サイトの試算。前提:月額は上の概況調査(令和6年度決算)。介護料収入の9割が国保連から、1割が利用者から入る(全員1割負担と仮定)。
利用者負担と保険外の利用料などは翌月27日に口座振替で回収。給与は月末締め翌月25日払い(休日は前営業日)。そのほかの支出(減価償却費を除く)は当月末払い。
開業直後の利用者が少ない時期の赤字、開業前の準備費用は含みません。この分は別に上乗せが必要です。

  • 訪問介護では給与日25日のまま北海道・宮城で開業すると東京より約223万円多く必要です。この差は訪問介護の給与費(月223万円)のちょうど1か月分に当たります。2回目の給与日(6月25日)が最初の入金(6月29日)より先に来るためです。
  • 給与を翌月末日払いにすると4都道府県とも東京と同じ額になります。ただ給与日を変えるには就業規則の変更が必要で、職員の生活にも響きます。社会保険労務士に相談したうえで慎重に決めたほうがいい話です。
  • 平均的な規模で動き始めた場合、入金のずれだけで必要になるのは現金支出の約1.1〜1.8か月分です。「2〜3か月分」との差は立ち上がりの赤字への備えと考えるのが実態に近いと思います。

利用者負担と介護報酬は入る日が違う

訪問介護の平均額を1割負担で分けると国保連から入るのは月284.1万円、利用者から回収するのは31.6万円(ほかに保険外の利用料などが13.3万円)です。
利用者負担は事業所が自分で請求・回収するお金で、口座振替の日を決めるのも自社です。
資金繰り表では国保連分と利用者負担分を別の行に分けて、それぞれの入金日で書き込みます。
2割・3割負担の利用者が多い事業所ほど自社で回収する分の比重が大きくなります。

運転資金の一般的な計算式は運転資金の計算方法で解説しました。

処遇改善加算:立て替える額と返済に回せないお金

令和8年度は令和9年度の介護報酬改定を待たずに期中改定が行われ、令和8年6月から処遇改善加算の加算率が上がりました。
加算を算定した事業者は加算の算定額に相当する賃金改善を実施しなければならないとされ、令和8年度に増えた加算額は新たな賃金改善(ベースアップが基本)に充てることが求められています。

サービス 令和8年4・5月
加算Ⅰ
6月以降
加算Ⅰイ
6月以降
加算Ⅰロ
介護報酬に占める割合(Ⅰイ) Ⅰ→Ⅰイの増加(平均的な事業所・月)
訪問介護 24.5% 27.0% 28.7% 21.3% 6.3万円
通所介護 9.2% 11.1% 12.0% 10.0% 9.5万円
地域密着型通所介護 9.2% 11.7% 12.7% 10.5% 5.8万円

賃金改善の義務は厚生労働省の通知(老発0313第6号、令和8年3月13日)の3ページに、4・5月の加算率は同じ通知の18ページに書かれています。
※ 加算は「加算を除く総単位数×加算率」なので、介護報酬に占める割合は「率÷(1+率)」で計算しています。増加額は上の概況調査の介護料収入が加算Ⅰ込みだったと仮定した当サイトの試算です。

6月分の加算は8月に入る。立て替えは1〜2か月分

同じ通知には実績報告の期日の説明として「令和9年3月分の処遇改善加算の支払が令和9年5月」とあります。加算も介護報酬と同じく翌々月払いです。
拡充後の最初の月(6月分)の加算は東京・大阪で8月24日、北海道で8月27日、宮城で8月28日に入ります。
6月分の給与から賃上げすると1〜2か月分を立て替えることになり、その額は平均的な事業所(Ⅰイ)で訪問介護は約6.3万〜12.7万円、通所介護は約9.5万〜19.1万円です。

金額は大きくありません。気をつけたいのは加算の全体額のほうです。訪問介護の平均的な事業所で介護料収入が加算Ⅰ込みだったと仮定すると、加算Ⅰの額は月約62.1万円で差引(月31.6万円)の約2倍です。
このお金は賃金改善に使うと決まっているので借入の返済原資にはなりません。
融資の相談で事業計画を作るときは売上から加算分を分けて示すと説明しやすくなります(融資の事業計画書の書き方)。

※ 当サイトの試算。前提:6月分の給与を7月24日(25日が土曜のため前営業日)に払い、6月分の加算を8月の国保連の支払日に受け取る。賃金改善には法定福利費等の事業主負担の増加分を含めることができます(同通知3ページ)。

平均の収支差率9.6%でも訪問介護の約35%は赤字

概況調査には収支差率ごとの事業所数の表(参考2)があります。件数を数え直すと平均と実態の差がはっきりします。

サービス 平均 中央値 収支差率0%未満 事業所数
訪問介護 9.6% 5.4% 35.1%(224) 638
通所介護 6.2% 3.5% 37.4%(162) 433
地域密着型通所介護 6.3% 5.1% 37.2%(118) 317

令和6年度決算・税引前・物価高騰対策関連補助金を含まない収支差率。0%未満の11階級の件数を当サイトで合計しました(割合の欄を足すと訪問介護35.2%、通所介護37.5%)。

訪問介護は収支差率20%以上の事業所が20.7%あるのに対し、-10%未満も13.8%あります。平均の9.6%は利益の大きい事業所に引き上げられた数字で、真ん中の事業所は5.4%です。

福祉医療機構(WAM)の経営分析参考指標(2024年度決算)だと赤字の割合は訪問介護45.5%、老人デイサービス(通所介護)44.8%です。
WAMは経常増減差額(0未満を赤字)で数え、開設1年未満の事業所を除くなど集計の対象と利益の定義が概況調査と違います。比べるなら同じ資料の中で比べるのが筋です。

WAMの集計対象は訪問介護が1,773事業所、老人デイサービス(通所介護)が5,976施設です。
赤字が続いている場合の融資の考え方は赤字決算でも融資を受ける方法、損益の見方は損益分岐点で解説しています。

返戻・過誤で入金がずれる月

請求の内容に不備があると請求は返戻(差し戻し)され、直して再請求するまで入金されません。
宮城県国保連の令和8年度の日程で4月に請求した分の流れを追うと次のとおりです。

  1. 4月10日までに請求 → 通常なら5月28日に入金
  2. 返戻の通知(インターネット請求の場合)が5月1日に届く
  3. 5月10日までに再請求できれば6月29日に入金(通常より32日遅れ)
  4. 5月10日に間に合わず6月に再請求すると7月30日(通常より63日遅れ)

通知から次の締切まで9日しかありません。
訪問介護の平均的な事業所で国保連分の1割が返戻になると約28万円の入金が1〜2か月後ろにずれます。
一方で概況調査の「介護報酬査定減」は令和6年度決算で見ると、訪問介護・通所介護・地域密着型通所介護のいずれも1事業所あたり月1千円以下です。問題は減額よりも遅れです。

遅れの日数は当サイトで計算。返戻の件数や割合の公的な統計は見つけられませんでした。

処遇改善加算の拡充や報酬改定があった月も同じで改定の反映は提供月の翌々月の入金からです。改定月の前後は資金繰り表の入金額を月ごとに見直しておくとずれに気づけます。

介護事業者が公的融資を相談するイメージ

足りないときの調達:介護事業者が使える公庫の制度

日本政策金融公庫の「ソーシャルビジネス支援資金」は介護サービス事業等を営む方(日本標準産業分類の老人福祉・介護事業等)が対象に明記され、利率は特別利率Bです。
融資限度額は7,200万円で、各種融資制度とは別枠とされています。返済期間は運転資金10年以内・設備資金20年以内(いずれも据置5年以内)です。

制度 対象・特徴 限度額 利率(令和8年9月1日現在)
ソーシャルビジネス支援資金 介護サービス事業等を営む方。各種融資制度とは別枠 7,200万円 特別利率B:無担保・申告2期済で年3.15〜4.75%、2期未満で年3.10〜4.70%
新規開業・スタートアップ支援資金 新たに事業を始める方、開業おおむね7年以内 7,200万円 基準利率(無担保・2期済で年3.80〜5.40%)。要件により特別利率
参考:一般的な水準 公庫・保証協会付融資 ― 年2〜5%程度

実際の条件は審査で決まります。

現行の金利で運転資金を10年・元利均等・据置なしで借りた場合、毎月の返済額は500万円で約4.9万〜5.2万円、1,000万円で約9.7万〜10.5万円(年3.15〜4.75%)です。
500万円・年4.75%の返済は、訪問介護の平均的な事業所の差引(月31.6万円、税引前)の約17%に当たります。
「公庫の金利は1%台」と書いているページもありますが、令和8年9月の水準とはかけ離れています。

※ 当サイトの試算。前提:固定金利・元利均等・120回・据置なし。制度の全体像は日本政策金融公庫の融資制度、信用保証協会付融資で解説しています。

融資が間に合わないときに介護報酬の債権を売るファクタリングを検討する事業者もいます。
扱うかどうかも条件も会社ごとに違うので、申し込む前に介護報酬債権が対象か、国保連への債権譲渡の通知が必要かを聞いておくべきです。仕組みはファクタリングとは、
銀行に断られたときの立て直し方は銀行に融資を断られたときにまとめています。
医療機関の診療報酬との違いはクリニックの資金繰りをご覧ください。

よくある質問

介護報酬はいつ入金されますか

サービス提供月の翌々月、国保連ごとに決まった日です。
令和8年度は東京都国保連が原則23日、大阪府が24〜26日、北海道が26〜29日、宮城県が26〜30日でした。正確な日付は都道府県の国保連が公表する年間日程で確かめられます。

介護事業の運転資金は何か月分必要ですか

支払日と給与日の順番で変わります。
概況調査の平均額で計算すると、訪問介護で給与日25日の場合は東京が約318万円、北海道・宮城が約541万円で、現金支出の約1.1〜1.8か月分です。開業直後の赤字の分はこれに上乗せが必要です。

処遇改善加算は借入の返済に使えますか

使えません。加算を算定した事業者には加算の算定額に相当する賃金改善を行う義務があります。
訪問介護の加算Ⅰイ(27.0%)では介護報酬の約21%が加算なので、返済の計画はこの分を除いた利益で立てることになります。

介護事業者が使える公庫の融資はありますか

ソーシャルビジネス支援資金があります。介護サービス事業等を営む方は特別利率B(令和8年9月1日現在、無担保・申告2期済で年3.15〜4.75%)、融資限度額は7,200万円で各種融資制度とは別枠です。

まとめ

  • 介護報酬の支払日は国保連ごとに違う。給与日25日だと東京は入金が先、北海道・宮城は給与が先
  • 訪問介護の平均的な事業所だと必要運転資金は東京約318万円、北海道・宮城約541万円。差は給与1か月分
  • 処遇改善加算は訪問介護Ⅰイで介護報酬の約21%。賃金改善に回すお金で、6月の拡充分は8月の入金まで立て替え
  • 平均の収支差率9.6%でも訪問介護の35.1%は赤字。中央値は5.4%
  • 返戻は通知から締切まで9日。間に合わないと入金は2か月遅れる
  • 公庫のソーシャルビジネス支援資金は特別利率B・別枠7,200万円

数字の調べ方

  • 収支と収支差率の分布は厚生労働省の概況調査のPDFを原文で読み、表の数字が崩れるページは画像にして読み取りました。赤字の割合は件数の欄から当サイトで合計しています。
  • 国保連の支払日は東京都・大阪府・北海道・宮城県の国保連が公表している令和8年度の日程表から転記し、曜日は当サイトで照らし合わせました。
  • 必要運転資金・処遇改善加算の立替額・返戻の遅れ・返済額は当サイトの試算で、式と前提を表の下に書いています。
  • ほかのページで見かけた「翌々月15日に入金」「公庫の金利は1%台」という説明は公式の日程・金利と食い違うので使っていません。ファクタリング会社が介護報酬債権を扱うかどうかは確かめきれていないため、特定の会社には触れていません。

このページについて

本ページは一般的な情報提供を目的としたもので、個別の資金調達・税務・労務・介護報酬の算定についての助言ではありません。
支払日は各都道府県の国保連、処遇改善加算の算定は指定権者(都道府県・市町村)、融資の条件は日本政策金融公庫にご確認ください。制度の内容は変わることがあるので、申込前に各機関の公式情報もあわせてご覧ください。
記載した計算例は説明のための単純化した試算です。

all-list-go