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税金を滞納しているときの資金調達|融資・保証・補助金・入札で何が止まり、猶予・完納で何が変わるか

最終更新日:

要点まとめ

  • 税金を滞納しているなら借りる前に税務署・自治体へ猶予を相談するのが先です。国税の換価の猶予は納期限から6か月以内、東京都の都税は3か月以内に申請が必要です。
  • 止まるかどうかは、窓口がどの税のどの納税証明書を求めるかで決まります。猶予中は「未納なし」のその3が出ず、所得金額のその2は出ます。だから国の入札(その3の3が必要)は止まり、IT導入補助金2026(2026年度から名称変更。その1かその2)は書類をそろえられます。
  • 国税の新規発生滞納9,935億円のうち52.1%が消費税です(令和7年度)。その一方で、納税コールセンターが催告した事業者などの82.3%が完納か納付誓約に至っています。早く連絡したほうが選べる手続きは多く残ります。

自社の状況は窓口ごとの突き合わせ表で、完納後の段取りは証明書が使えるまでの日数からどうぞ。

税金を滞納したまま資金を集めようとすると「滞納中でも使える」とうたう手段が目に入ります。
でも最初にすべきことは調達ではなく、税務署・年金事務所・市区町村への相談です。
猶予が認められれば延滞税は軽くなります。分割で納める計画も立てられ、ほかの手続きにも道が残ります。

猶予制度の手順は納税の猶予と社会保険料の猶予に書いたので
ここでは滞納がある状態で融資・保証・補助金・入札・許認可の窓口に何が起きるかと猶予や完納で何が変わるかを、公表資料と法令だけで整理しました。

まず確認:いまはどの段階か

国税は納期限を過ぎると次の順に進みます。差押えの前か後かで残る影響が大きく変わります。

段階 法令・公式の定め
納期限の翌日から 延滞税がかかる。令和8年は2か月を経過する日まで年2.8%、その後は年9.1%
督促状 原則として納期限から50日以内に発する(国税通則法37条2項)
差押え 督促状を発した日から起算して10日を経過した日までに完納しないときは、財産を差し押さえなければならない(国税徴収法47条1項)
猶予の申請 国税の申請による換価の猶予は納期限から6か月以内(国税徴収法151条の2)。猶予を受けた期間の延滞税は年1.3%(令和8年)

延滞税の率は2026年9月時点のものです。
猶予の要件・申請書・延滞税の計算は納税の猶予にまとめています。

地方税と社会保険料は窓口も期限も別

住民税・事業税は都道府県・市区町村が、社会保険料は年金事務所が担当します。
地方税の申請による換価の猶予は各自治体の条例で定める期間内(地方税法15条の6)です。たとえば東京都の都税は納期限から3か月以内です。
国税の「6か月」と同じつもりでいると間に合わないことがあります。
社会保険料の手順と延滞金は社会保険料の猶予に書きました。

滞納の状況で窓口の対応が変わるイメージ

滞納・猶予・完納で各窓口に何が起きるか

融資や補助金の窓口が税について何を求めるかを、公式に書かれている条件だけで並べました。
「滞納があると全部だめ」ではありません。窓口ごとに見ている税と書類が違います。

窓口 税についての公式の条件 見る税 猶予中・分納中は
日本政策金融公庫
(国民生活事業)
公開している申込みの必要書類(確定申告書2期分など)に納税証明書は含まれていない 公表なし 公表なし。猶予の許可通知書と納付の実績で説明する
マル経融資
(商工会議所・商工会の推薦)
所得税・法人税・事業税・都道府県民税・市町村民税を原則としてすべて完納していること(領収書か納税証明書で確認) 国税+地方税 完納ではないため原則の要件に当たらない
信用保証協会
(東京)
税金を滞納し完納の見通しが見込めない場合は取扱いできない 税金 猶予や分納の計画は「見通し」を示す材料になる(可否は審査)
信用保証協会
(大阪)
納税証明書の欄は「納付状況を確認できる書面等」(申込金融機関に確認)。有担保保証の担保提供者はその3 国税+住民税・事業税 その3は猶予中の税目では出ない(次章)
自治体の制度融資 横浜市:申込時に納期の到来している横浜市民税を完納。福岡県:事業税などの納税証明書が必要 地方税 完納が条件の制度では、猶予中の地方税があると満たさない
国の補助金 ものづくり(第23次):納税・滞納の条件の記載なし。持続化(第19回):納税証明書は課税所得15億円超でないことの確認用。IT導入補助金:法人税(個人は所得税)の納税証明書その1かその2 国税 その2は猶予・未納に関係なく出る。交付の条件は各回の要領で確認
国の入札
(全省庁統一資格)
納税証明書その2と、その3の3(法人)/その3の2(個人)。申請日以前3か月以内のもの 法人税・所得税・消費税 その3系が出ない。記入要項は「未納を解消して」取得するよう求める
一般酒類小売業免許 申請前2年内に国税・地方税の滞納処分を受けていないこと。現に国税・地方税を滞納していないこと 国税+地方税 手引に猶予中の扱いの記載はない。税務署に確認

保証協会・制度融資は調べた地域の例です。ほかの地域は各機関で条件が違うことがあります。

表からわかることは3つです。

  • 条件は「完納」と「完納の見通し」に分かれます。マル経や横浜市の制度融資は完納が条件なので猶予中では足りません。東京の保証協会は「見通し」を問うので、猶予の許可と計画どおりの納付が意味を持ちます。
  • 国税を片付けても地方税で止まる手続きがあります。制度融資で問われるのは住民税・事業税です。マル経と酒類免許は国税と地方税の両方です。
  • 公庫の公開書類に納税証明書がないからといって、滞納が審査に響かないわけではありません。審査で何を見るかは公表されていないので、猶予の状況とあわせて自分から説明しておくほうが安全です。

もうひとつ、国の補助金は事業の実施と確認の後に入金される後払い(精算払)です。滞納を解消する資金には向きません。
つなぎの考え方は補助金のつなぎ融資で書いています。

猶予中に出る納税証明書・出ない納税証明書

前の表で結果を分けているのは納税証明書の種類です。国税庁のFAQにある猶予中の扱いをそれを求める手続きの側から並べ直しました。

証明書 証明する内容 猶予中の扱い 求める手続き(今回調べた範囲)
その1 納付すべき税額・納付した税額・未納税額など 発行される。備考欄に猶予中である旨と猶予期限が載る IT導入補助金(その1かその2)
その2 所得金額 未納や猶予に関係なく発行。猶予の記載もない 全省庁統一資格、IT導入補助金
その3・その3の2・その3の3 未納の税額がないこと 猶予中の税目については発行されない 全省庁統一資格(その3の3/その3の2)、大阪の保証協会の有担保保証の担保提供者(その3)
その4 指定した期間に滞納処分を受けたことがないこと その期間に滞納処分がなければ発行。猶予の記載はない (酒類免許は地方税で同じ趣旨の証明を求める)

ネット上の解説には「猶予が認められれば滞納ではない」と書くものもあります。けれどその3が必要な手続きでは猶予中でも通りません。
国税庁のFAQ(問11)も、その3が出ない場合の代わりの書類は提出先に問い合わせるよう案内しています。
逆にその1かその2で足りる手続きなら、猶予中でも書類はそろえられます。

その3の3が証明するのは「法人税」と「消費税及地方消費税」に未納がないことです。
国の入札で消費税の証明まで求める理由を、調達ポータルの記入要項は平成11年11月に国税庁から、消費税の滞納を防ぐため納税証明書の提出を求めるよう協力依頼があったためと説明しています。
消費税の滞納が特に問題にされるという話には、ちゃんと公式の裏づけがあるわけです。

完納してから証明書が使えるまでの日数

完納してもすぐに「未納なし」の証明書が出るとは限りません。国税庁の資料にある日数と、提出先が決めている有効期間は次のとおりです。

段取り 公式に書かれていること
コンビニで納付した 納付済みの納税証明書を出せるのは、納付の委託から約3週間後
ほかの方法で納付した 同じ資料に日数の記載はない。急ぐなら税務署に確認
証明書を請求する 手数料は単価400円(e-Taxで請求すると370円)
提出先の有効期間 全省庁統一資格:申請日以前3か月以内。横浜市の制度融資:3か月以内の最新のもの

たとえば10月1日にコンビニで完納すると、証明書が出るのは10月22日ごろです。
その日に取った証明書は「申請日以前3か月以内」の手続きなら翌年1月22日ごろまで使えます。
申請の予定日が決まっているなら、そこから逆算して早めに納めておくと間に合います。

差押えを一度受けると完納しても残るもの

その4(滞納処分を受けたことがない証明)は、指定した期間に滞納処分があれば出ません。
酒類小売業免許は申請前2年内に国税・地方税の滞納処分を受けていないことを要件にしています。
督促状が届いたら差押えの前に連絡を入れるのが鉄則です。

数字で見る滞納:新規発生の52.1%は消費税

令和7年度に新しく発生した国税の滞納は9,935億円で、課税された額に対する割合は1.1%。年度末に残っている滞納は9,847億円でした。
国税庁「令和7年度租税滞納状況の概要」(令和8年8月)の数字をもとに、税目ごとの割合を当サイトで計算し直すと次のようになります。

税目 徴収決定済額 新規発生滞納額 発生割合 新規発生に占める割合
消費税 26兆5,657億円 5,172億円 1.9% 52.1%
申告所得税 5兆1,322億円 2,146億円 4.2% 21.6%
法人税 23兆3,180億円 1,456億円 0.6% 14.7%
相続税 4兆631億円 613億円 1.5% 6.2%
源泉所得税 23兆2,541億円 397億円 0.2% 4.0%
その他 7兆4,618億円 152億円 0.2% 1.5%
合計 89兆7,949億円 9,935億円 1.1% 100%

地方消費税は含みません。発生割合=新規発生滞納額÷徴収決定済額、占める割合=税目の新規発生÷合計で、どちらも当サイトの計算です。国税庁の各数値は四捨五入しているので内訳の合計は一致しません。

金額では消費税が半分以上で法人税の約3.6倍です。課税額に対する割合だと申告所得税がいちばん高く、法人税・源泉所得税は1%を下回ります。
消費税が滞納になりやすい理由(売上と一緒に入ってまとめて出ていく)は納税の猶予で説明しています。

滞納の多くは完納か分割の約束に至っている

同じ資料によると、令和6年度に発生した滞納9,925億円のうち令和7年度末までに8,625億円(86.9%)が整理されています。
納税コールセンターが令和7年7月〜令和8年6月末に催告した1,148千者のうち、完納が829千者(72.2%)、納付誓約が116千者(10.1%)でした。
合わせて82.3%。連絡して計画を立てれば片付くことのほうが多いんです。

86.9%は整理済額の合計6,687億円+1,938億円を9,925億円で割った当サイトの計算です。

納税猶予と借入の順番を考えるイメージ

借入と猶予はどちらが先か

猶予される額は税額の全部ではありません。税額から納付可能額(手元資金 − 当面の資金繰りに必要な額)を引いた残りです。
国税庁のFAQ(問16〜18)では、当面の必要額は一般に1か月以内に支出が予定されている金額です。緊急融資や給付金も計算上は手元資金に含めるものの、支出先が決まっていればその分を必要額に加えるとしています。
つまり借りたお金の使い道が決まっているかどうかで結果が変わります。

状況(消費税200万円が払えない) 手元資金 当面の必要額 納付可能額 猶予
A 借入なし 300万円 250万円 50万円 150万円を猶予(50万円は速やかに納付)
B 使い道の決まっていない500万円を借りた後 800万円 250万円 550万円 200万円を一度に払えるので、「一時に納付が困難」に当たらない
C 設備代など使い道の決まった500万円を借りた後 800万円 750万円 50万円 150万円を猶予(Aと同じ)

※ 当サイトの試算です。前提は手元資金300万円・1か月以内の支出予定250万円。実際の判定は税務署が個別に行います。

Bは借りたお金で税金を払う形になり、借入の金利まで負担することになります。
150万円に対する延滞税は1日あたり猶予中の年1.3%なら約53円、2か月を過ぎた年9.1%なら約374円です。
借入を予定しているなら申し込む前に借入の予定と使い道を税務署に伝えて相談しておくのが安全です。
翌期に欠損金の繰戻し還付を受ける予定でも、猶予を受けなければ通常の延滞税がかかります(FAQ問10)。

「税金はすべてに優先する」の範囲:担保と売掛金

国税徴収法8条は、国税をすべての公課その他の債権に先立って徴収すると定めています。
ただ例外があって、それが滞納中の資金調達に直接関わってきます。

条文 定め 資金調達との関係
16条 国税の法定納期限等以前に設定された抵当権は、その国税より先に弁済される 裏返すと滞納している税の法定納期限等より後に設定する抵当権は、その国税に劣後する。不動産担保で新しく借りる場面で問題になる
62条2項 債権を差し押さえたときは、滞納者に取立てその他の処分を禁じる 差し押さえられた売掛金は売ることも回収することもできない
24条 担保の目的で譲渡した財産(譲渡担保財産)から、国税を徴収できる場合がある。法定納期限等以前の譲渡であることを証明できれば適用しない(8項) 売掛金を担保の目的で譲渡している場合、その売掛金が国税の徴収の対象になりうる

条文は国税徴収法の8条・15条・16条・24条・62条です。
法定納期限等は、期限内に申告した税なら原則として法定納期限、後から更正・決定で確定した税なら通知書を発した日などです(15条1項)。個別の契約がどれに当たるかは専門家に見てもらうのが確実です。

「税金はあらゆる債務に優先する」と書いた解説も見かけますが、先に設定された抵当権は国税より優先します。
逆に滞納中に後から設定する担保は国税に劣後します。貸す側から見れば担保の価値がそのぶん目減りするわけです。
ファクタリングも差し押さえられた売掛金には使えません。手数料も猶予中の延滞税よりはるかに高くつきます。
費用の比べ方は今日中に事業資金が必要なときに、仕組みはファクタリングとはに書いています。

今日やることの順番

  1. 滞納している税目・金額・納期限を国税・地方税・社会保険料に分けて書き出す
  2. 税務署(徴収担当)・自治体・年金事務所に電話して申請期限を聞く
  3. 猶予の申請に使う収支の見込みを作る。借入の予定と使い道も伝える
  4. 申し込みたい窓口がどの税のどの証明書を求めるかを前の2つの表で調べる
  5. 完納する税は、証明書が必要な日から逆算して納付方法を選ぶ
  6. 金融機関には猶予の許可通知書と納付の計画を持って自分から説明する

税理士との準備の仕方は税理士への相談に、断られた後の立て直しは銀行に融資を断られたときにまとめています。

よくある質問

税金を滞納していると、融資は一切受けられませんか

窓口によって条件が違います。マル経融資や一部の自治体の制度融資は税の完納が条件です。東京信用保証協会は「完納の見通しが見込めない」場合を対象外としています。
まず税務署・自治体に猶予を相談し、納付の計画を立ててから金融機関に状況を説明する流れになります。

猶予が認められれば、納税証明書で「未納なし」を証明できますか

できません。国税庁のFAQによると、未納がないことの証明(その3・その3の2・その3の3)は猶予中の税目については発行されません。
その1には猶予中である旨が記載されます。所得金額のその2は猶予に関係なく発行されます。

完納したら、すぐに融資や入札に申し込めますか

納付方法によっては時間がかかります。コンビニで納付すると、納付済みの納税証明書を出せるのは約3週間後です。
全省庁統一資格は申請日以前3か月以内の証明書を求めるので、申請日から逆算して納付する必要があります。
差押えを受けていた場合は、酒類免許のように2年間影響が残る手続きもあります。

税金を払うためにお金を借りるのは避けるべきですか

先に猶予を相談するのが基本です。猶予を受けた期間の延滞税は令和8年は年1.3%です。
使い道の決まっていない借入で手元資金が増えると猶予の対象にならないことがあります。借入の予定は税務署に伝えておくべきです。

まとめ

  • 借りる前に税務署・自治体・年金事務所へ。換価の猶予の申請は国税が納期限から6か月以内で都税は3か月以内。督促状の発送から10日を過ぎると差押えの段階に入る
  • マル経・横浜市の制度融資は完納が、東京の保証協会は完納の見通しが条件。公庫の公開書類に納税証明書はない
  • 猶予中はその3が出ず、その2は出る。国の入札(その3の3)は止まり、IT導入補助金(その1かその2)は書類をそろえられる
  • コンビニで完納すると証明書が出るまで約3週間。提出先の多くは3か月以内の証明書を求める
  • 新規発生滞納の52.1%は消費税。ただ催告を受けた事業者などの82.3%が完納か納付誓約に至っている
  • 使い道の決まっていない借入は猶予の額を減らすことがある。借入の予定は税務署に伝える

調べ方

  • 各窓口の条件は公庫・商工会議所・信用保証協会・自治体・補助金の公募要領・調達ポータル・国税庁の原文を読んで整理しました。書かれていない点は「公表なし」としています。
  • 滞納の統計は国税庁「令和7年度租税滞納状況の概要」から転記しました。税目ごとの割合は表の画像で行と税目を照らし合わせてから当サイトで再計算しています。
  • 差押えと優先関係は国税徴収法・国税通則法の条文にあたりました。猶予額の仮設例は当サイトの試算で、前提を表の下に書いています。
  • ネット上でよく見かける本則のままの延滞税の率や国税と都税の申請期限の混同、「猶予中は滞納ではない」「公庫は納税証明書が必須」といった説明は、公式の記載と合わないので使っていません。

このページについて

本ページは一般的な情報提供を目的としたもので、個別の税務・融資・法律に関する助言ではありません。
猶予の可否は税務署・自治体・年金事務所が、融資・保証・補助金・許認可の可否は各機関が判断します。条件や割合は変わることがあるので、申込前に各機関の公式情報をご確認ください。
記載した計算例は説明のための単純化した仮設例です。

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