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この記事の要点
- 公庫の制度名は「挑戦支援資本強化特別貸付(資本性ローン)」です。限度額は国民生活事業が7,200万円(別枠)、中小企業事業が15億円で、期限一括返済・無担保・無保証人です。
- 自己資本とみなすのは金融機関の評価で、決算書は負債のままです。みなす割合は残存5年未満になると毎年20%ずつ下がるため、5年1か月で借りると100%は1か月だけ、10年なら60か月続きます。
- 3,000万円・10年の利息総額は、毎年黒字なら1,095万円、赤字なら150万円です。月々の支払は軽くなりますが、満期に3,000万円を一括で返します。
資本性劣後ローンの代表は日本政策金融公庫の「挑戦支援資本強化特別貸付(資本性ローン)」です。
借入ですが、元金は期限一括で返します。利率は業績で変わり、法的倒産のときは他の債務より後に回ります。この三つがそろうので、金融機関は自己資本とみなせます。
ただし決算書の貸借対照表では負債のままで、債務超過が消えるのは金融機関の評価の上だけです。
条件は上位のページとほぼ同じなので、返済期間別に100%と見てもらえる期間・債務超過が評価上消える期間・利息の3通りの総額を中心に置きました。
公庫の資本性ローンの条件を国民生活事業と中小企業事業で並べる
| 項目 | 国民生活事業 | 中小企業事業 |
|---|---|---|
| 融資限度額 | 7,200万円(別枠) | 15億円 |
| 返済期間 | 5年1か月以上20年以内 | 5年1か月、または6年から20年までの各年 |
| 返済方法 | 期限一括返済。それまでは利息のみを支払う | |
| 利率(税引後当期純利益が0円以上) | 5年1か月3.25%/5年1か月超7年以内3.40%/7年超10年以内3.65%/10年超15年以内3.80%/15年超20年以内3.95% | 5年1か月3.25%/6・7年3.40%/8〜10年3.65%/11〜15年3.80%/16〜20年3.95% |
| 利率(0円未満) | 返済期間にかかわらず一律0.50% | |
| 融資後3年間の利率 | 次の三つをすべて満たすと0.50%。民間金融機関の支援で事業計画書を策定している/その金融機関の融資額が必要資金から自己資金を引いた額の原則2分の1超/3年間その金融機関へ進捗を報告し経営指導を受ける | |
| 担保・保証人 | 無担保・無保証人 | |
| 劣後 | 法的倒産手続きの開始決定があると、償還順位が同等以下のものを除くすべての債務に劣後する | |
| 提出と特約 | 公庫に事業計画書を出す。四半期ごとの経営状況の報告などを含む特約を結ぶ | |
| 対象 | 新規開業・スタートアップ支援資金や企業再建資金など7つの融資制度のいずれかの対象で、地域経済活性化にかかる事業を行う方。税務申告を1期以上行っていれば原則として所得税等を完納していること | 新規事業・経営改善・企業再建などに取り組み、雇用効果が認められる事業や地域社会に不可欠な事業などを行う方 |
原文:公庫「資本性ローン」国民生活事業・中小企業事業。どちらのページにも「〜現在」の日付はなく、現行の利率に改められた日は原文で確かめられませんでした。公庫の金利情報(令和8年10月1日現在)は、この制度について業績に応じた利率が適用されるとだけ書き、数値は載せていません。
検索上位には、限度額10億円や利率0.5%から2.95%(5年1か月が2.60%、20年が2.95%)と書いたページがあります。
この数字は金融庁FAQの別紙(令和5年4月1日時点)にある新型コロナ対策版の条件で、現行の2ページとは合いません。

決算書では負債のまま:自己資本とみなすのは金融機関
検索上位には「貸借対照表上で自己資本とみなされる」と書いたページが複数あります。公式の言い回しは違います。
- 公庫(国民生活事業):金融機関の資産査定上、自己資本とみなすことができる。中小企業事業のページは「金融検査上」と書く
- 金融庁:令和2年5月27日の監督指針の改正で、金融検査マニュアルの廃止(令和元年12月)後も、資本類似性を償還条件・金利設定・劣後性で判断する観点は変わらないと明確にした。債務者の評価で資本とみなすもので、形式にとらわれず実態で評価する(FAQ問2)
- J-Net21(中小機構):帳簿上は債務に分類されるが、金融機関では自己資本の一部とみなされる
借りた3,000万円は決算書の負債に入り、純資産は増えません。債務超過の会社なら決算書の債務超過はそのまま残ります。
変わるのは銀行が債務者を評価するときの見方です。
貸借対照表のどの科目に載せるかを公式に指定した記載は、確かめた原文に見つかりませんでした。決算書の処理は顧問の税理士に確認します。
みなされるには条件が続くことも前提です。金融庁FAQ問18は、期限の利益を失う事由が発生すると、解消するまで通常の負債とみなして評価するとしています。
評価は収益力やキャッシュ・フローも含めて総合的に行う(問20)ため、借りれば融資が出やすくなるとは言えません。
債務超過の見つけ方と解消年数は債務超過の解消方法、銀行の債務者区分は銀行の格付け、自己資本比率の見方は自己資本比率の目安にあります。
返済期間で変わる、100%と見てもらえる期間
金融庁FAQ問18では、残存期間が5年以上の間は残高の100%を資本とみなします。5年未満になると1年ごとに20%ずつ減ります(4年以上5年未満は80%、3年以上4年未満は60%、2年以上3年未満は40%、1年以上2年未満は20%、1年未満は0%)。
公庫の国民生活事業のページにも同じ扱いが書かれています。
この割合を、返済期間別に実行日からの月数へ直しました。
| 返済期間 | 黒字のときの利率 | 100%が続く期間 | 80%以上が続く期間 | 0%になる時点 |
|---|---|---|---|---|
| 5年1か月 | 3.25% | 実行から1か月 | 13か月 | 49か月(4年1か月)を過ぎたあと |
| 10年 | 3.65% | 60か月(5年) | 72か月(6年) | 108か月(9年)を過ぎたあと |
| 20年 | 3.95% | 180か月(15年) | 192か月(16年) | 228か月(19年)を過ぎたあと |
※ 当サイトの試算。前提は、残存期間を「返済期間−実行からの経過月数」で数え、金融庁FAQ問18の区切り(5年・4年・3年・2年・1年)に当てはめたことです。実際の評価は金融機関が決算日の時点で行います。
原文:金融庁「資本性借入金関係FAQ」問18、利率は公庫。
最短の5年1か月は利率が最も低い一方で、100%と見てもらえるのは実行直後の1か月だけです。
金融庁FAQ問4は、契約時の償還期間が5年を超えることを条件にしており、5年1か月はその下限にあたります。
返済期間を延ばすと黒字のときの利率は上がりますが(3.25%から3.95%)、100%の期間は大きく伸びます。
債務超過が評価上消えるのは、実行から何年までか
仮設例で数えます。決算書の純資産がマイナス2,000万円の会社が3,000万円を借ります。決算書では現預金と負債が3,000万円ずつ増え、純資産はマイナス2,000万円のままです。
金融機関の評価の上では、純資産に「3,000万円×みなし割合」を足して見ます。
| 実行からの経過 | 返済期間5年1か月 | 返済期間10年 | ||
|---|---|---|---|---|
| みなし割合 | 評価上の純資産 | みなし割合 | 評価上の純資産 | |
| 実行時 | 100% | +1,000万円 | 100% | +1,000万円 |
| 満1年 | 80% | +400万円 | 100% | +1,000万円 |
| 満2年 | 60% | −200万円 | 100% | +1,000万円 |
| 満5年 | 0% | −2,000万円 | 100% | +1,000万円 |
| 満6年 | 返済済み | 返済済み | 80% | +400万円 |
| 満7年 | 返済済み | 返済済み | 60% | −200万円 |
| 満8年 | 返済済み | 返済済み | 40% | −800万円 |
| 満9年 | 返済済み | 返済済み | 20% | −1,400万円 |
※ 当サイトの試算。前提は、期間中の利益・損失・他の借入の返済は考えず、みなし割合は経過した満年数のときの残存期間で決めたことです。5年1か月は満5年で残存1か月、10年は満6年で残存4年です。
債務超過2,000万円を評価上消すには、みなす額が2,000万円を超える必要があります。借入3,000万円ならみなし割合が67%を超える間で、100%か80%の期間です。60%では1,800万円で足りません。
10年なら実行から72か月まで、5年1か月なら13か月までが目安です。借入額が債務超過額以下なら100%でも消えません。
利益が積み上がれば純資産は別に増えるので、実際の動きはこの表と同じにはなりません。

利息は業績で3通り:3,000万円の総額
利率は融資後1年ごとに、直近の業績で2区分のどちらかが当てはまります。3,000万円を借りたときの利息総額を三つの場合で並べました。
| 場合 | 5年1か月 | 10年 | 20年 |
|---|---|---|---|
| 毎年黒字(3.25%/3.65%/3.95%) | 4,956,250円 | 10,950,000円 | 23,700,000円 |
| 最初の3年が0.50%、以後は黒字 | 2,481,250円 | 8,115,000円 | 20,595,000円 |
| 毎年赤字(0.50%) | 762,500円 | 1,500,000円 | 3,000,000円 |
| 黒字のときの毎月の利息 | 81,250円 | 91,250円 | 98,750円 |
※ 当サイトの試算。前提は、3,000万円・利息のみ・月払いで、月の利息=借入額×年利÷12とし、日割りや端数処理は反映していないことです。最初の3年が0.50%になるのは、民間金融機関の支援を受けるなど前の表の三つの条件を満たした場合です。利率区分は国民生活事業の表に合わせています。
原文:公庫「資本性ローン」。
実際は赤字と黒字の年が混ざるので、総額は黒字の行と赤字の行のあいだに入ります。
20年で毎年黒字の場合、利息だけで2,370万円になり、元本の3,000万円の約8割です。
検索上位に「年率5.0%以上」と書いたページがありますが、現行の最高は3.95%です。
月々の支払は軽くなるが、満期に3,000万円が残る
同じ3,000万円を10年で借りた場合を、元利均等の通常の融資と比べます。構造の違いだけを見るため、通常の融資の利率は資本性ローン(黒字)と同じ3.65%に置きました。
| 3,000万円・10年・年3.65% | 毎月の支払 | 満期に残る額 | 満期の分を月々積み立てた場合 |
|---|---|---|---|
| 資本性ローン(黒字) | 91,250円 | 30,000,000円 | 341,250円 |
| 元利均等の通常の融資 | 298,770円 | 0円 | 298,770円 |
※ 当サイトの試算。月払い・端数処理なし。積み立ては元本分を120か月で割った月250,000円で、積立の利息は考えていません。通常の融資の実際の利率は金融機関と審査で決まります。
月々の資金繰りは約21万円軽くなります。この差は元本の返済を満期に回した分で、負担が消えたわけではありません。
満期に3,000万円を返す手当て(手元の資金・事業の成長・別の借入での返済など)を、申込のときの事業計画書に入れます。事業計画書の作り方は融資の事業計画書の書き方にあります。
申込の前に確かめること
- 窓口:国民生活事業は7つの融資制度のいずれかの対象であること、中小企業事業は雇用効果などの要件があります。窓口の目安は原文になく、公庫の支店で確かめます。公庫の融資制度全体は日本政策金融公庫の融資制度にあります。
- 審査と枠:どちらのページも、審査の結果利用できない場合があると書いています。中小企業事業のページは取扱額に限りがあることも書いています。
- 期限前の返済:現行の2ページに繰上返済の記載はなく確認できませんでした。金融庁FAQ問12は、債務者の意思による期限前弁済は差し支えないとする一方、債権者の意思で期限前に回収できる契約は資本性借入金とみなせないとしています。新型コロナ対策版のQ&A(令和4年10月3日現在)は繰上返済を原則5年間できないとしていますが、これは別の制度の記載です。
- 決算書の処理:科目や注記の扱いは公式の記載が見つからなかったため、税理士に確認します。
よくある質問
資本性劣後ローンを借りると、決算書の債務超過は解消しますか
決算書の上では解消しません。借入は負債のままです。金融機関が債務者を評価するときに、残存期間に応じた割合を資本とみなします。
評価の上で債務超過が消えるのは、みなす額が債務超過額を超えている間に限られます。
返済期間は何年にするのがよいですか
一律の答えはありません。100%と見てもらえる期間は、5年1か月は1か月・10年は60か月・20年は180か月です。
黒字のときの利率は3.25%・3.65%・3.95%と上がります。必要な期間と利息の負担を並べて、公庫の窓口で相談します。
赤字のときの利率はいくらですか
返済期間にかかわらず年0.50%です。融資後1年ごとに直近の業績で区分が決まり、税引後当期純利益が0円未満の場合に当てはまります。
民間金融機関の支援などの条件を満たすと、融資後3年間も0.50%です。
国民生活事業と中小企業事業のどちらに申し込みますか
限度額と窓口が違います。国民生活事業は7,200万円(別枠)、中小企業事業は15億円です。
それぞれ対象となる融資制度や要件が異なるため、どちらに当たるかは公庫の支店で確かめます。
まとめ
- 公庫の資本性ローンは、限度額が国民生活事業で7,200万円、中小企業事業で15億円。期限一括返済で、黒字のときは3.25〜3.95%、赤字のときは0.50%
- 自己資本とみなすのは金融機関の評価で、決算書は負債のまま。貸借対照表で自己資本になるという書き方は、公庫・金融庁の記載と違う
- 100%と見てもらえる期間は、5年1か月は1か月・10年は60か月・20年は180か月。仮設例(債務超過2,000万円・借入3,000万円)では、10年で72か月まで評価上の債務超過が消える
- 3,000万円・10年の利息総額は150万円から1,095万円。月々は91,250円で軽いが、満期に3,000万円が残る
この記事の調べ方
- 条件・限度額・利率は、公庫の国民生活事業と中小企業事業の2ページと金利情報の原文を取得して照合しました。自己資本とみなす扱いと割合は、金融庁の監督指針の改正通知とFAQ(問2・4・12・18・20)で確かめています。書かれていない点は「記載なし」「確認できず」としています。
- 検索上位に見られた新型コロナ対策版の条件や公式にない利率は、現行の原文と合わないため使っていません。みなし割合の月数・仮設例・利息・月々の支払は当サイトの計算で、前提は表の下に書いています。
このページについて
本ページは一般的な情報提供を目的としたもので、個別の融資・税務・法律に関する助言ではありません。
融資の可否と利率は日本政策金融公庫が、資本とみなす扱いは各金融機関が、決算書の処理は税理士・公認会計士が判断します。制度の条件は変更されることがあるため、申込前に公庫の公式情報と支店でご確認ください。
記載した計算例は説明のための単純化した試算です。









