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この記事の要点
- 売掛債権担保融資保証制度は、平成19年8月に在庫を担保に加えて拡充され、今は流動資産担保融資保証制度(ABL保証)です。保証限度額は2億円(借入限度額2億5,000万円)、保証割合は80%、保証料率は年0.68%です。
- 中小企業庁の旧ページに残る借入限度額1億1,100万円・9割保証は平成14年4月の記載です。売掛先3社の売掛金が計6,000万円なら、東京協会の掛目(70〜100%)で借入は4,200万〜6,000万円の範囲です。
- 保証料率は借入極度額に対し年0.68%です。極度額4,200万円なら年285,600円です。ファクタリングの手数料2%を60日の債権に払うと、年率は12.2%(単純換算)に当たります。
売掛金を担保に保証協会の保証付きで借りる仕組みは、売掛債権担保融資保証制度として平成13年に始まり、今は流動資産担保融資保証制度(ABL保証)という名前で続いています。
検索で上位に出る中小企業庁のページは平成14年4月の記載で、限度額も保証割合も今と違います。
売掛債権担保融資保証制度は、いまABL保証と呼ばれている
中小企業庁によると、受付は平成13年12月17日に始まりました。平成19年8月に在庫を担保に加えて拡充し、名称を流動資産担保融資保証制度に改めています(中小企業庁・全国信用保証協会連合会)。旧ページはこちらです。
旧ページと現行の違いは次のとおりです。
| 項目 | 中小企業庁の旧ページ(平成14年4月) | 現行(全国信用保証協会連合会・各協会) |
|---|---|---|
| 担保にできるもの | 売掛債権 | 売掛債権と棚卸資産。個別保証は売掛債権のみ |
| 借入限度額 | 1億1,100万円 | 2億5,000万円 |
| 保証の範囲 | 貸付残高の9割を代位弁済 | 保証割合80%の部分保証。保証限度額2億円 |
| 保証料率 | 記載なし | 年0.68% |
| 譲渡禁止(制限)特約 | 付きの売掛債権は対象外。売掛先の解除承諾書が必要 | 東京協会:特約解除等が必要 |
保証割合が9割から8割になった時期は、確認できた資料に書かれていません。平成21年2月の中小企業庁のページには、すでに保証割合8割・保証限度額2億円・保証料年0.68%の記載があります。
今の条件は東京(2024.04)・千葉・埼玉・神奈川などの協会ページで同じです。
信用保証協会の保証一般の仕組みは信用保証協会の保証で説明しています。
この制度の特徴は、不動産ではなく売掛債権や在庫を譲渡担保として金融機関と協会に渡す点と、連帯保証人を求めない協会が多い点です。

売掛金からいくら借りられるか:掛目と2億5,000万円の枠
保証限度額の2億円は、借入2億5,000万円の80%です。
借入額は売掛金の額面と同額にはなりません。売掛債権の価額に掛目を掛けた額が借入限度額になります。
東京協会のリーフレットは、掛目を売掛債権で70〜100%(上限)、棚卸資産で原則30%(70%を上限に引き上げ可能)と書いています。掛目は金融機関と協会の審査で売掛先ごとに決まります。
まず、2億5,000万円の枠に届くには売掛金がいくら要るかを、掛目ごとに計算しました。
| 掛目 | 借入2億5,000万円に必要な売掛残高 |
|---|---|
| 70% | 約3億5,714万円 |
| 80% | 3億1,250万円 |
| 90% | 約2億7,778万円 |
| 100% | 2億5,000万円 |
次に、売掛先3社(A社3,000万円、B社2,000万円、C社1,000万円。計6,000万円)の例です。
| 掛目 | 借入限度額 | 協会の保証(80%) | 金融機関の負担(20%) |
|---|---|---|---|
| 70%(低い方) | 4,200万円 | 3,360万円 | 840万円 |
| 100%(上限) | 6,000万円 | 4,800万円 | 1,200万円 |
※ 当サイトの試算。前提:売掛先はすべて国内の事業者、掛目は3社とも同じ、売掛債権のみを担保にする場合。実際の掛目は売掛先ごとに審査で決まり、希望どおりにならないことがあります。
原文:東京信用保証協会、全国信用保証協会連合会。
在庫を担保にする場合は掛目が低く、1,000万円の在庫で原則300万円、上限の70%でも700万円です。在庫を担保にできるのは法人の根保証だけで、個別保証は売掛債権のみです。
対象になる売掛債権は、売掛金債権・割賦販売代金債権・運送料債権・診療報酬債権・工事請負代金債権などで、売掛先が事業者であるものです。
個人(消費者)への売掛金は担保にできません。
売掛金そのものの回収の進め方は売掛金の回収にまとめています。
保証料は借入極度額に対し年0.68%
全国信用保証協会連合会は、保証料率を「借入極度額・借入金額に対し年0.68%」と書いています。
根保証(1年間くり返し借りられる形)は極度額、個別保証(1回ごと)は借入額が基準と読めます。
使わなかった枠の保証料が戻るかは、確認できた原文に書かれていません。
| 借入極度額 | 保証料(年0.68%・1年分) |
|---|---|
| 1,000万円 | 68,000円 |
| 4,200万円 | 285,600円 |
| 6,000万円 | 408,000円 |
| 2億5,000万円 | 1,700,000円 |
※ 当サイトの試算。前提:極度額に年0.68%を掛けた1年分。割引制度(福岡県の記載)は反映していません。1年未満の個別保証の日割りの計算方法は、確認できた資料に書かれていません。
埼玉県は「年0.68%以内」、東京は「一律年0.68%」の表記です。
費用は保証料のほかに、金融機関所定の利率の利息がかかります。
利率は公表されていないので、合計の年率は計算していません。
東京協会のリーフレットは金融機関が担保管理手数料を徴収できるとも書いていますが、金額の記載はありません。根保証では、売掛債権の残高を3か月に1回以上、金融機関へ報告します。

売掛先に知られるか:対抗要件の選び方と費用
売掛債権を担保にするには、保証の決定後・借入の前に、法律が定める対抗要件を整えます。
売掛債権では、売掛先ごとに次のいずれかを選びます。
| 方法 | 売掛先に知られるか | 費用など |
|---|---|---|
| 承諾 | 知られる。売掛先から所定の承諾書をもらう | 登録免許税は不要 |
| 通知 | 知られる。所定の通知書を売掛先に郵送する | 登録免許税は不要 |
| 債権譲渡登記 | 登記だけでは通知されない。ただし金融機関が必要と判断した時点で売掛先に通知する | 登録免許税は1件7,500円(債権個数が5,000個以下の場合)。東京の備考欄は「法人の場合に限られます」 |
原文:東京信用保証協会、法務省「債権譲渡登記等の添付書面・登録免許税」(7,500円は租税特別措置法により軽減された額と記載)。
「知られずに借りたい」場合は債権譲渡登記が候補です。ただし東京協会と福井県の協会は、登記を選べるのは法人だけと書いています。福井県の表では根保証に限られ、個別保証は承諾か通知です。
この2協会では、個人事業主は承諾か通知を選ぶことになり、売掛先に知られます。ほかの協会は確認していません。
譲渡制限特約があっても借りられるか
民法466条2項は、当事者が債権の譲渡を禁止または制限する意思表示をしていても、債権の譲渡は効力を妨げられないと定めています。経済産業省と法務省のリーフレットによると、2020年4月1日からの扱いです。
資金調達目的の譲渡は、契約の解除や損害賠償の原因にならないという法務省の解釈も示されています。
ところが東京協会の2024.04のリーフレットは、取引契約に債権譲渡制限特約があれば「特約解除等が必要」と書いています。
法律上は譲渡できても、この保証では売掛先の対応を求められることがあります。協会が求める理由は、確認できた資料にありません。
申込みの前に、売掛先との基本契約書に特約があるかを見ておいてください。
原文:e-Gov法令検索「民法」466条、経済産業省・法務省リーフレット、福井県信用保証協会。
ファクタリングとの違いを、年率に直して見る
金融庁は、ファクタリングを法的には債権の売買(債権譲渡)契約と説明しています。
ABL保証付きの融資は借入で、売掛債権は担保(譲渡担保)です。返済の義務があります。中小企業庁の旧ページは、返済期日を売掛債権の入金予定日に合わせるのが基本と説明しています。
| 項目 | ABL保証付きの融資 | ファクタリング |
|---|---|---|
| 法的な性質 | 借入。売掛債権は譲渡担保 | 債権の売買(債権譲渡)契約(金融庁) |
| 費用 | 保証料年0.68%+金融機関所定の利率(+担保管理手数料) | 債権額と買取代金の差(手数料) |
原文:金融庁「ファクタリングの利用に関する注意喚起」、中小企業庁、東京信用保証協会。
費用の比べ方で迷うのは、ファクタリングの手数料が債権額に対する率で、借入の利率や保証料が年率で示されることです。
手数料率を債権が入金されるまでの日数で年率に直すと、次のようになります(手数料率×365÷日数)。
| 手数料率 | 30日で入金 | 60日で入金 | 90日で入金 |
|---|---|---|---|
| 2% | 24.3% | 12.2% | 8.1% |
| 5% | 60.8% | 30.4% | 20.3% |
| 10% | 121.7% | 60.8% | 40.6% |
※ 当サイトの単純な換算。前提:手数料率は債権額に対する率で、ほかの費用は含めない。2%・5%・10%は計算のための例で、特定の事業者の料率ではありません。
手数料2%でも、60日で入金される債権なら年率は12.2%です。
ABL保証側は保証料の年0.68%に金融機関の利率が加わりますが、その利率は公表資料にないので同じ表には並べていません。
借入の見積りを金融機関から取り、この表の年率と並べて比べてください。
ファクタリングの仕組みと注意点はファクタリングとはにまとめています。
金融庁は、ファクタリングとして行われる取引でも、買取代金が債権額に比べて著しく低いものなど経済的に貸付けと同じ働きをするものは貸金業に該当するおそれがあるとしています。
貸金業を行うには財務局か都道府県の登録が必要で、登録の有無は金融庁の「登録貸金業者情報検索サービス」で調べられます。
協会ごとの違い
条件は協会ごとに書き方が少しずつ違います。確認できた7協会の記載を並べます。
| 協会 | 保証限度額 | 保証料率の表記 | 個別保証の期間 | 連帯保証人 |
|---|---|---|---|---|
| 東京(2024.04) | 2億円以内(ABL1・ABL2の保証残高を含む) | 一律年0.68% | 1年以内 | 不要 |
| 千葉県 | 2億円 | 1件当たり年0.68% | 1年以内 | 不要 |
| 福岡県 | 2億円以内 | 年0.68%(割引制度あり) | 1年以内 | 法人は代表者、個人は不要 |
| 埼玉県 | 2億円 | 年0.68%以内 | 1年以内 | 必要となる場合がある |
| 福井県 | 2億円 | 0.68% | 1年以内 | 記載なし |
| 岐阜県(2024年3月15日現在) | 2億円 | 年0.68%(責任共有保証料率) | 6か月(未発生の売掛債権は1年) | 要しない |
| 神奈川県 | 2億円 | 0.68% | 1年以内 | 不要 |
原文:東京・千葉・福岡・埼玉・福井・岐阜・神奈川の各協会のページ。上記以外の協会は確認していません。
- 連帯保証人の記載が分かれています。保証人を求めない協会が多い一方で福岡県は法人の代表者を、埼玉県は場合によって保証人を求めると書いています。金融庁などの「経営者保証改革プログラム」(2022年12月23日)は、ABLに対する信用保証制度で経営者保証の徴求を2024年4月から廃止するとしています。福岡県と埼玉県は、申込先の協会に確かめてください。経営者保証の考え方は経営者保証で説明しています。
- 根保証は、協会と取扱いの契約を結んだ金融機関からの申込みに限られると東京と福岡県が書いています。取引銀行が対象かを先に聞いてください。
- 一般の保証とは別枠と明記しているのは東京と埼玉県です。ほかの協会のページには別枠かどうかの記載が見つかりません。
申込みの流れと、公表されていないこと
東京協会のリーフレットの流れは、取引のある金融機関への申込み→金融機関と協会の審査→保証決定→対抗要件の具備→借入の順です。根保証は保証期間中くり返し借りられます。
売掛債権は不動産のように目に見える担保ではないため、通常の申込書類に加えて、取引基本契約書・発注書・納品書・請求書・支払通知書・入金口座の預金通帳などで取引の実績を示します。
売掛先からの入金を確認するため、入金口座を金融機関に届け出ます。
申込みから実行までの日数は、確認した協会のページに記載がありません。
日数が公表されている公庫の融資は公庫の融資は何日かかるかで整理しています。
よくある質問
売掛債権担保融資保証制度は今も使えますか
名前を変えて続いています。平成19年8月に在庫を担保に加えて拡充され、流動資産担保融資保証制度(ABL保証)になりました。
保証限度額は2億円、保証割合は80%、保証料率は年0.68%です。
売掛金が1,000万円あると、いくら借りられますか
掛目によって変わります。東京協会の掛目は売掛債権で70〜100%(上限)なので、1,000万円の売掛金なら700万〜1,000万円が目安です。
実際の掛目は売掛先の内容ごとに、金融機関と協会が審査で決めます。
売掛先に知られずに借りられますか
債権譲渡登記を選べば、登記の時点では通知されません。ただし金融機関が必要と判断した時点で、売掛先に通知されることがあります。
東京協会と福井県は登記を法人に限っており、福井県ではさらに根保証だけです。
個人事業主でも使えますか
売掛債権のみを担保にする場合は使えます。在庫を担保にできるのは法人に限られます。
東京協会と福井県では債権譲渡登記も法人に限られ、個人は承諾か通知で売掛先に知られます。
まとめ
- 売掛債権担保融資保証制度は、平成19年8月に拡充されて流動資産担保融資保証制度(ABL保証)になった
- 現行は保証限度額2億円・借入限度額2億5,000万円・保証割合80%・保証料年0.68%。中小企業庁の旧ページの1億1,100万円・9割は平成14年4月の記載
- 借入額は売掛金に掛目(東京協会:売掛債権70〜100%)を掛けた額。売掛先3社で計6,000万円なら4,200万〜6,000万円
- 保証料は借入極度額に対し年0.68%。極度額4,200万円で年285,600円。利率は金融機関所定で未公表
- 債権譲渡登記(登録免許税7,500円)でも、金融機関の判断で売掛先に通知されることがある
- ファクタリングの手数料2%は、60日の債権なら年率12.2%(単純換算)に当たる
この記事の調べ方
- 制度名の変遷と現行の条件は、中小企業庁・全国信用保証協会連合会・7つの信用保証協会の原文で照合しました。書かれていない点は「記載なし」としています。
- 検索上位に残る平成14年4月の限度額・保証割合と、出どころのない「年利2〜10%」「最短2週間」は、現行の原文と合わないか根拠が確認できないため使っていません。
- 借入可能額・保証料・手数料の年率換算は当サイトの計算で、前提は表の下に書いています。民法466条はe-Govの条文で確かめました。
このページについて
本ページは一般的な情報提供を目的としたもので、個別の融資・税務・法律に関する助言ではありません。
保証や融資の可否・掛目・利率は金融機関と信用保証協会が審査で判断します。条件は協会ごとに異なり、変更されることがあるため、申込前に各協会の公式情報をご確認ください。
記載した計算例は説明のための単純化した仮設例です。










