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補助金と助成金の違い|後払いだから資金繰りの穴埋めには使えない理由

最終更新日:

要点まとめ

  • 補助金は審査・採択があり、採択されないこともある支援で、助成金は要件を満たして申請すれば原則受給できるものが多い支援です。代表的なものだと補助金は経済産業省・中小企業庁、助成金は厚生労働省が所管しています。
  • 補助金は後払い(精算払い)です。交付決定のあとに事業者が全額を立て替えて支払い、実績報告と確定検査を経てから入金されます。交付決定前に発注した経費は対象外です。
  • 設備1,000万円・補助率1/2の仮設例だと申請から入金まで13か月かかり、途中で手元資金が200万円不足しました。今月足りない資金の穴埋めには使えません。先に見るべきは猶予制度や公的融資です。

違いを比べたいなら比較表、資金繰りに困っているなら先に見るべき制度からどうぞ。

補助金と助成金のいちばん大きな違いは審査・採択があるかどうかです。
補助金は予算と件数に限りがあるので、申請しても採択されないことがあります。
助成金は要件を満たして申請すれば原則として受給できるものが多い制度です。

ただ資金繰りの目で見ると、見落とされやすい共通点がもう一つあります。
どちらも「先にお金が入る」制度ではないということです。
補助金は事業者が全額を払ったあとに入金され、雇用関係の助成金も取組を実施してから申請します。

以下ではまず違いを表にまとめ、補助金が入金されるまでの流れを時系列で追いながら
仮設例で現金残高がどう動くかを計算しました。
最後に、資金繰りに困っているとき補助金より先に見るべき制度を載せています。

補助金と助成金の違い【比較表】

一般的な違いを表にしました。
ただ名称だけで性質は決まりません。
「助成金」という名前でも補助金と同じように交付決定や予算枠がある制度もあります(後で取り上げる業務改善助成金など)。

補助金 助成金(雇用関係)
主な所管 経済産業省・中小企業庁など(自治体独自のものもある) 厚生労働省(窓口は都道府県労働局・ハローワーク)
目的 設備投資・新事業・販路開拓など、政策目標に沿った事業の支援 雇用の安定、正社員化、賃上げ、人材育成など
審査・採択 あり。事業計画を審査し、採択されないこともある 要件を満たせば原則受給できるものが多い
受付時期 公募期間が決まっている(締切がある) 制度ごとに申請期限がある(例:キャリアアップ助成金は取組後6か月分の賃金を支払った日の翌日から2か月以内)
財源 国などの予算 雇用保険二事業で行う助成金は、事業主が負担する雇用保険料が財源
お金が入る時期 事業の実施・支払い → 実績報告 → 確定検査のあと 取組を実施し、要件を満たしたあとに支給申請
代表例 新事業進出・ものづくり商業サービス補助金、IT導入補助金(2026年度から名称変更)、省力化投資補助金、持続化補助金 キャリアアップ助成金、雇用調整助成金、人材開発支援助成金

財源について、厚生労働省の「雇用保険制度の概要」には雇用保険二事業は事業主のみの保険料で国庫負担はなく、雇用調整助成金・特定求職者雇用開発助成金・人材開発支援助成金などを実施していると書かれています。

助成金でも「申請すれば必ずもらえる」わけではない

助成金にも条件があります。たとえば厚生労働省の業務改善助成金は
事業場内最低賃金の引上げと設備投資等の計画を立てて交付申請し、交付決定を受けてから事業を行う仕組みです。
交付決定前に助成対象の設備を導入した場合は対象外で、
予算の範囲内で交付するため、申請期間内に募集を終了する場合があるとされています。

実務では「補助金か助成金か」という名前より、
交付決定が必要か、いつ支払われるか、予算枠があるかを制度ごとに見ていくほうが大事です。

補助金が後から入金される流れのイメージ

補助金は後払い:申請から入金までの流れ

補助金は原則として事業終了後の後払い(精算払い)です。
事業者が補助対象となる費用の全額をいったん立て替え、あとから補助率分が入金されます。
国の補助金の手続きは補助金等適正化法に沿って次の順に進みます。

# 段階 内容 現金
1 応募申請 公募要領に沿って事業計画を出す 出ない
2 採択 審査を通過し「補助金交付候補者」になる。まだ発注できない 出ない
3 交付申請・交付決定 見積書等で経費を精査。ここで減額されることもある 出ない
4 発注・納品・支払 交付決定後に契約し、実施期間内に支払いまで完了させる 全額が出ていく
5 実績報告 証拠書類(見積・契約・納品・請求・振込記録など)を提出 出ない
6 確定検査・額の確定 対象経費として認められた額で補助金額が決まる 出ない
7 精算払請求・入金 確定通知を受け取ってから請求する ここで初めて入る
8 事業化状況報告 入金後も報告が続く(5回・5年間が一般的) —

手続きの根拠は「補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律」の第5条・第6条・第8条・第14条・第15条です。

交付決定前の発注・契約は補助対象外

いちばん多い失敗がこれです。採択の通知を受けた時点では、まだ発注してはいけません。
中小企業庁の解説によると交付決定の前に発注した経費は補助対象外で、契約を結んだだけでも対象外になります。
中小企業新事業進出補助金のFAQにも「事前着手は禁止」とはっきり書かれていて、
対象は交付決定日から実施期間内に契約・検収・支払をした経費だけです。

資金繰りでいえば「交付決定が出るまで設備の導入を始められない」ということです。
急いで設備を入れたい事情があるなら、補助金を待つこと自体がコストになります。

採択されても、満額が入るとは限らない

  • 交付申請の段階で減額されることがある。採択は申請額の全額の交付決定を保証するものではない
  • 交付決定額はあとから増やせない。見積より高くなっても、差額は自己負担
  • 分割払いは実施期間内に全額を払い終える必要がある。一部でも期間内に払っていないと、その契約の経費がすべて対象外になる例がある
  • 確定検査で対象外と判断された経費は、補助金額から外れる

ルールは補助金ごとに違います。申請する補助金の公募要領・交付規程で中身を見ておく必要があります。

仮設例:設備1,000万円・補助率1/2で、現金はいつ出ていつ入るか

ここからは説明のための仮設例です。
各段階の間隔は、公式ルールで決まっているものと仮に置いたものを分けて書いています。

仮設例の前提

  • 補助対象の設備:1,000万円(税抜)。補助率1/2、補助上限の範囲内
  • 申請時点の手元現金:800万円。ほかの売上・経費の入出金はゼロとして、補助事業の分だけを見る
  • 支払条件:契約時に着手金300万円、納品・検収時に残金700万円(どちらも実施期間内)
  • 補助金額:1,000万円 × 1/2 = 500万円(減額なしと仮定)

時系列表:申請した月を0か月目とすると

時期 手続き 現金の動き 間隔の根拠
0か月目 応募申請 0 —
3か月目 採択発表 0 仮置き。例:新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の第1回は10月30日締切、採択発表は令和9年1月頃(予定)
5か月目 交付申請 → 交付決定 0 仮置き。例:IT導入補助金2026の通常枠は9月29日締切で、交付決定は11月9日(予定)
6か月目 契約・発注、着手金を支払う −300万円 ルール:交付決定前の契約・発注は対象外
9か月目 納品・検収、残金を支払う −700万円 ルール:支払いは実施期間内にすべて完了(例:交付決定日から14か月以内・18か月以内)
10か月目 実績報告 0 ルール:完了後30日以内(新事業進出補助金、省力化投資補助金一般型の例)
12か月目 確定検査 → 補助金額の確定 0 仮置き。書類の不備や差し戻しがあると延びる
13か月目 精算払請求 → 入金 +500万円 例:事業再構築補助金では、請求書類に不備がなければ8営業日程度で振込予定

月末の現金残高の推移

(単位:万円) 0〜5か月目 6〜8か月目 9〜12か月目 13か月目
その月の支払い 0 300(6か月目) 700(9か月目) 0
その月の入金 0 0 0 500
月末の現金残高 800 500 −200 300

自己資金800万円では、9か月目に200万円足りなくなる

6か月目:800万円 − 着手金300万円 = 500万円
9か月目:500万円 − 残金700万円 = −200万円(200万円不足)
13か月目:−200万円 + 補助金500万円 = 300万円

検算:800万円 − 1,000万円 + 500万円 = 300万円。最終的な実質負担は1,000万円 − 500万円 = 500万円です。
ただ申請から入金まで13か月、最初の支払いから数えても7か月、
1,000万円を払い終えてからも4か月は補助金の分まで自社で立て替えています。
この例だと、つなぎ資金を用意しなければ残金を払えません。

消費税の分も、いったん現金が出ていく

課税事業者の場合、補助金の計算では消費税を原則として補助対象経費から除きます。
一方で設備会社への支払いは税込です。
消費税率10%なら支払いは1,000万円 × 1.10 = 1,100万円になり、
補助金は500万円のまま。自己資金800万円なら300万円不足に広がります。
資金計画は税込の支払額で立てておくのが安全です。

消費税の扱いは補助金の種類と事業者の課税区分によって違います。

自社の数字で同じ計算をするなら、資金繰り表に「支払予定」と「補助金の入金予定」を別の行で入れるのが確実です。
入金予定の月は上の表のように遅れる前提で置いておきます。

補助金が「今月足りない現金」の穴埋めに使えない5つの理由

# 理由 資金繰りへの影響
1 後払い(精算払い) 入金は確定検査のあと。上の例では申請から13か月
2 交付決定前の発注・契約は対象外 すでに払った費用や、急ぎの支払いには充てられない
3 対象経費が決まっている 公募要領で定めた経費だけ。たとえば事業再構築補助金では借入金の支払利息は対象外
4 採択されない・減額されることがある 入金額が確定するのは最後。返済や支払いの当てにできない
5 入金後も義務が続く 事業化状況の報告、取得した財産の処分制限。目的外に使えば返還を求められることがある

補助金は「これから行う投資の負担を減らす制度」であって
「足りない現金を埋める制度」ではありません。
ミラサポplusにも、補助率によって事業費の1/2〜1/3程度は自己負担になり、取引先の金融機関からのつなぎ融資が要る場合もあると書かれています。

補助金の税金の扱い

補助金は非課税の収入ではありません。
事業再構築補助金の手引きによると、補助金は経理上は支払を受けた事業年度の収入として計上し、法人税等の課税対象です。
入金額がまるごと手元に残るとは限らないことも資金計画に入れておく必要があります。

一方で固定資産の取得に充てた補助金には特例があります。
個人事業主なら、交付の目的に合った固定資産を取得したときは
確定申告書に明細書を付けることを条件に、取得に充てた部分を総収入金額に算入しないというのが国税庁のタックスアンサーの説明です。
この場合は固定資産の取得価額は補助金を差し引いた額になるので、その後の減価償却費も小さくなります。
法人には法人税法の圧縮記帳の規定があります。

適用できるかどうかや経理の方法は個別の状況で変わるので所轄の税務署か税理士に相談しておくと安心です。

2026年9月時点の代表的な補助金

補助金は名称の変更や統合が多い分野です。
ここには各事務局の公式サイトに2026年9月時点で載っている内容だけを並べました。
金額はいずれも「最大」で、申請枠・従業員数・賃上げ等の要件によって変わります。

補助金 主な対象 補助上限・補助率 スケジュール
新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 革新的な製品・サービスの開発、新市場への進出、輸出体制の強化に係る設備投資等 革新的新製品・サービス枠 最大2,500万円(賃上げ特例3,500万円)、新事業進出枠・グローバル枠 最大7,000万円(同9,000万円)。補助率は中小企業1/2(要件により2/3)など 第1回:令和8年10月30日18:00締切、採択発表は令和9年1月頃(予定)
IT導入補助金2026(2026年度から名称変更) ITツールの導入 通常枠:1〜3プロセス5万〜150万円、4プロセス以上150万〜450万円。補助率1/2以内(最低賃金近傍の事業者2/3以内) 通常枠:2026年9月29日17:00締切、交付決定11月9日(予定)
中小企業省力化投資補助金(一般型) 人手不足に対応する省力化の設備投資 従業員5人以下750万円(大幅賃上げ特例1,000万円)〜101人以上8,000万円(同1億円)。補助率 中小企業1/2、小規模・再生事業者2/3 第8回:申請受付2026年9月中旬〜10月中旬(予定)。カタログ注文型は随時受付
小規模事業者持続化補助金(一般型・通常枠) 小規模事業者の販路開拓等 上限50万円(インボイス特例+50万円、賃金引上げ特例+150万円、最高250万円)。補助率2/3 第20回:申請受付2026年11月5日〜12月15日17:00

新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の締切は公式サイトの一部に9月30日の表記も残っています。申請前に事務局サイトで最新の公募要領を見ておいたほうが確実です。

名称が変わった・公募を終えた補助金

  • IT導入補助金は2026年から新しい名称に変わりました
  • 事業再構築補助金は第13回公募(2025年3月26日受付終了)で新規の応募受付を終えています
  • 中小企業新事業進出補助金は公募を終了しています。公式サイトでは新事業進出・ものづくり商業サービス補助金が案内されていますがこちらは別の補助金と明記されているので、旧制度の公募要領のルールをそのまま当てはめることはできません

代表的な助成金(厚生労働省)

助成金 何をしたら 金額(中小企業) お金が入るまで
キャリアアップ助成金(正社員化コース) 有期雇用労働者等を正社員に転換 有期→正規:1人当たり80万円(重点支援対象者)/40万円(それ以外) キャリアアップ計画を実施日の前日までに提出 → 転換 → 6か月分の賃金を支払う → その翌日から2か月以内に支給申請 → 審査・支給決定
業務改善助成金 事業場内最低賃金を50円以上引き上げ、生産性向上の設備投資等を行う 最大600万円。助成率4/5(事業場内最低賃金1,050円未満)・3/4(同1,050円以上) 交付申請(令和8年9月1日〜)→ 交付決定 → 事業実施・支払 → 事業実績報告・支給申請 → 交付額確定・支払

業務改善助成金の申請期限は、地域別最低賃金の発効日の前日か11月30日のどちらか早い日です。

助成金も取組を実施して費用や賃金を払ったあとに入る点は補助金と変わりません。
キャリアアップ助成金なら正社員に転換してから少なくとも6か月分の賃金を払い終えてからの申請になります。

資金繰りの公的制度を相談するイメージ

資金繰りに困っているなら、補助金より先に見るべき制度

「補助金で資金繰りを改善したい」と思って調べ始めた方は、状況に合わせて次の制度から当たるのが近道です。
補助金は資金繰りが落ち着いてから、次の投資の負担を減らすために考えるものです。

いまの状況 先に見る制度 理由
税金の納付期限に間に合わない 納税の猶予・換価の猶予 滞納してからでは融資審査にも響く。期限前に相談する
社会保険料が払えない 社会保険料の猶予 年金事務所への相談が先。放置すると選択肢が減る
開業前・開業直後で資金が足りない 創業融資 実績がなくても申し込める制度がある
運転資金・設備資金を低いコストで借りたい 日本政策金融公庫 審査に時間はかかるが、1〜2か月待てるなら有力
取引銀行から借りたいが、実績や担保が足りない 信用保証協会付融資 協会の保証で金融機関が貸しやすくなる
半年〜1年先の入金を待てる設備投資の計画がある 補助金 投資の自己負担を減らせる。ただし立替資金の手当てが前提

どの制度を使うにしてもいつ、いくら足りなくなるかが分かっていないと相談は進みません。
資金ショートの兆候が出ているなら、補助金の公募を待っている余裕はありません。

よくある質問

助成金はいつ振り込まれますか

取組を実施し、支給申請をして審査を受けたあとです。
たとえばキャリアアップ助成金(正社員化コース)は、転換後6か月分の賃金を支払った日の翌日から2か月以内に支給申請し、
労働局の審査を経て支給決定されます。業務改善助成金は、交付決定後に事業を実施し、事業実績報告を審査して交付額が確定してから支払われます。
いずれも取組を始めてすぐに入るお金ではありません。

補助金を今月の運転資金や借入の返済に使えますか

使えません。補助金の対象になるのは公募要領で定められた経費だけで、
入金されるのも事業の実施・支払いと確定検査のあとです。
今月の資金が足りない場合は、納税の猶予などの猶予制度や、公的融資を先に確認してください。

補助金に採択されたら、すぐに発注してもいいですか

いけません。採択の段階ではまだ補助金交付候補者で、
交付申請をして交付決定を受けてから契約・発注します。
交付決定前に発注した経費は、契約を結んだだけでも補助対象外になります。

補助金に税金はかかりますか

課税の対象になる収入です。
事業再構築補助金の手引きでは、支払を受けた事業年度の収入として計上し、法人税等の課税対象になると説明されています。
固定資産の取得に充てた場合は、個人は総収入金額不算入、法人は圧縮記帳の規定があります。
扱いは個別の状況によるため、所轄の税務署または税理士に確認してください。

まとめ

  • 補助金は審査・採択がある。助成金は要件を満たせば原則受給できるものが多い
  • ただし業務改善助成金のように、助成金でも交付決定や予算枠がある制度がある
  • 補助金は後払い(精算払い)。交付決定後に全額を立て替え、確定検査のあとに入金
  • 交付決定前の発注・契約は対象外。採択されても減額されることがある
  • 設備1,000万円・補助率1/2の仮設例では、申請から入金まで13か月、途中で200万円不足
  • 今月足りない現金の穴埋めには使えない。先に猶予制度や日本政策金融公庫などの公的融資を確認する

このページについて

本ページは一般的な情報提供を目的としたもので、個別の補助金・助成金の申請や税務に関する助言ではありません。
補助金・助成金の名称、補助上限、補助率、スケジュール、対象経費は公募回ごとに変更されます。
申請の際は、必ず各事務局・厚生労働省の最新の公募要領・交付規程・支給要領をご確認ください。
税務の取扱いは所轄の税務署または税理士にご確認ください。
記載した計算例は説明のための単純化した仮設例です。

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