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創業1年目の資金繰り|据置期間の終了と2年目の税金が重なる月を、公的データと24か月の試算で確認

最終更新日:

要点まとめ

  • 公庫の調査では開業から平均15.5か月の時点で予想月商に届いていない開業者は41.3%、開業した年の年末に黒字基調の企業は約半数(50.9%)です。1年目の売上が計画を下回るのは珍しいことではありません。
  • 創業融資840万円・据置1年のカフェの仮設例だと据置期間中は予想の約74%の客数で家計費まで回るのに、据置が明けると約83%が必要になります。月の返済は26,250円から142,917円へ、約5.4倍です。
  • 売上が予想どおりの人には、2年目に所得税・住民税・予定納税・個人事業税がまとめて来ます。インボイスの2割特例は2026年9月30日を含む課税期間で終わり、個人は2027年分から3割特例、2026年10月以後に設立した法人は1回も使えません。

手元資金の動きは24か月の試算、税金の時期は2年目の支払いカレンダーからどうぞ。

創業融資を受けて開業したあと、1年目の資金繰りで本当に苦しくなるのは「今月」より1年後です。
1年目は据置期間で返済は利息だけ。税金もまだ来ないので、手元のお金はあまり減らないように見えます。
ところが2年目に入ると元金の返済と、1年目の所得にかかる税金が、同じ時期に始まります。

そこで公庫・国税庁・法令の原文で条件を確かめたうえで、創業融資の記事と同じカフェの仮設例を使い、開業から24か月の手元資金を計算してみました。

開業1年目の売上と採算:公的調査の数字

日本政策金融公庫(公庫)総合研究所の「2025年度新規開業実態調査」(公庫が融資した開業1年以内の企業、回答2,165社、調査時点で開業から平均15.5か月)によると、開業前に予想した月商に対して調査時点の月商は次のとおりでした。

予想月商達成率(n=2,024) 割合
50%未満 10.5%
50〜75%未満 16.6%
75〜100%未満 14.2%
100〜125%未満 24.5%
125%以上 34.2%
予想に届いていない(100%未満の合計) 41.3%

41.3%と75%未満の27.1%は当サイトで合計した数字です。採算は「黒字基調」67.0%・「赤字基調」33.0%(n=2,043)。

開業時に苦労したことの1位は「資金繰り、資金調達」56.9%(三つまでの複数回答、n=2,091)で「財務・税務・法務に関する知識の不足」も36.4%ありました。調査時点になると資金繰りは36.2%(n=2,078)に下がり、「顧客・販路の開拓」48.8%が1位です(同 p.13)。

黒字になるまでの時間:開業した年の年末は約半数が赤字基調

同じ企業を5年間追った公庫の「新規開業パネル調査」(2016年開業の第4コーホート)を見ると、採算が黒字基調の企業の割合は次のように変わっています。

各年の年末 1年目(開業年) 2年目 3年目 4年目
第4コーホート(2016年開業、n=888) 50.9% 70.7% 75.0% 76.1%
第3コーホート(2011年開業) 55.4% 72.5% 78.2% 78.5%

5年目(2020年末)はコロナ禍の影響で62.8%に下がっています。対象は公庫の融資を受けた企業なので、日本の開業者全体とは同じではありません。

開業した年の年末に赤字基調の企業は約半数、2年目の年末でも約3割です。黒字になるまでの赤字は運転資金で埋める前提で計画しておく必要があります。

「起業して1年で6割が倒産」「1年で3割が廃業」といった数字もよく見かけますが、それを裏づける公的な原文は見当たりませんでした。
同じパネル調査だと3,517社のうち廃業した企業の割合は2年目の年末で2.2%、5年目の年末で8.9%です(p.4 表-2。過去のコーホートの5年目は15.4%・15.2%・10.2%)。

創業1年目のお店のイメージ

据置期間が終わると、月の返済は約5.4倍になる

公庫の新規開業・スタートアップ支援資金は返済期間が設備資金20年以内・運転資金10年以内で、いずれも据置期間は5年以内です。
創業融資の記事と同じ840万円・7年(84回)・元金均等返済とし、公庫の基準利率(令和8年9月1日現在、無担保・税務申告2期未了)の下限と上限で計算しました。

据置期間 据置中の月の支払い 据置明けの初回 倍率 総利息
なし(年3.75%) — 126,250円 — 1,115,625円
1年(年3.75%) 26,250円 142,917円 5.4倍 1,273,125円
2年(年3.75%) 26,250円 166,250円 6.3倍 1,430,625円
3年(年3.75%) 26,250円 201,250円 7.7倍 1,588,125円
1年(年5.35%) 37,450円 154,117円 4.1倍 1,816,325円

※ 当サイトの試算。前提:返済期間は据置期間を含めて7年、利息は「月初の残高×年利率÷12」の月割りの単純計算。基準利率は2026年9月時点で3.75〜5.35%です。実際の返済額は公庫の返済予定表で見てください。

据置を1年延ばすたびに総利息は年3.75%で157,500円増えます。黒字化が間に合わなければ、明けた月から差額の分だけ手元資金が減っていきます。

予想の100%・75%・50%で24か月を回すと

創業融資の記事のカフェ(客単価1,200円、予想1日60人、月25日営業、原価率30%、経費月65万円、家計費月25万円)が上の据置1年・年3.75%で1月に開業したとします。
開業時の手元資金は借りた運転資金の270万円です。最初に、家計費まで払っても手元資金が減らない客数を出しておきます。

時期 必要な粗利(月) 必要な客数(1日) 予想60人に対して
据置期間中(1〜12か月目) 926,250円 44.1人 73.5%
据置明け(13か月目〜) 1,042,917円 49.7人 82.8%

※ 当サイトの試算。必要な粗利=経費65万円+利息26,250円+家計費25万円(据置明けは元金116,667円を加える)。客数=必要な粗利÷粗利率70%÷(1,200円×25日)。

据置期間中は予想の約74%で回っていたお店が、据置明けからは約83%ないと手元資金が減り始めます。
開業者の分布でいうと予想の75〜100%未満の14.2%がちょうどこの境目にいます。売上を3通りに変えて24か月を計算しました。

月末の手元資金 予想の100%(60人) 予想の75%(45人) 予想の50%(30人)
1年目の月の収支 +333,750円 +18,750円 −296,250円
9か月目 570万円 287万円 3万円
10か月目 604万円 289万円 −26万円(不足)
12か月目 671万円 293万円 −86万円
13か月目(据置明け) 692万円 283万円 −127万円
15か月目(3月:所得税) 667万円 254万円 −209万円
20か月目(8月) 716万円 197万円 −415万円
24か月目 757万円 154万円 −579万円

※ 当サイトの試算。前提:売上は開業月から一定、減価償却費は考えない、2年目の税は次の章の計算(所得控除等の合計を仮に150万円)、インボイス未登録で消費税の納付なし、国民健康保険料・国民年金は家計費に含む。

  • 予想の100%:手元資金は増えますが、2年目は3月・7月・8月・11月の4か月で月の収支がマイナスです(3月は所得税で約47万円のマイナス)。
  • 予想の75%:1年目はほぼ横ばいです。ところが据置が明けた13か月目から毎月約10万円ずつ減り、2年目の12か月で約138万円減ります。このままだと24か月目の154万円も約16か月でなくなる計算です。
  • 予想の50%:月約30万円の不足が続き、据置明けを待たずに10か月目で手元資金が尽きます。

資金が尽きる月は資金繰り表を作れば前もってわかります。兆候については資金ショートの兆候、返済を含めた損益分岐点は損益分岐点の計算に書きました。

2年目の支払い時期のイメージ

2年目に初めて来る支払いのカレンダー

1年目の所得にかかる税金は2年目に来ます。上のカフェ(個人事業主・1月開業、2年目=2027年)について、国税庁と地方税法の定めに沿って並べました。

時期(2年目) 支払い 決まり方 100%の例 75%の例
1月〜 据置明けの返済 元金116,667円+利息 142,917円〜 142,917円〜
3月15日まで 所得税の確定申告・納付 1年目の所得に税率(復興特別所得税2.1%を含む) 687,643円 88,061円
6月・8月・10月・翌1月 住民税(普通徴収) 1年目の所得に所得割10% 各137,625円 各43,125円
7月・11月 所得税の予定納税 前年の申告納税額が15万円以上なら、その3分の1ずつ 各229,214円 なし
8月・11月 個人事業税 (事業の所得−事業主控除290万円)×5%(飲食店業など第一種事業) 各102,625円 各8,125円

※ 当サイトの試算。1年目の事業所得は100%で700.5万円、75%で322.5万円。所得税・住民税は所得控除等の合計を仮に150万円とした課税所得で計算し、住民税の均等割・調整控除は省略しています。個人事業税は2回に分けて計算しました(少額なら1回で全額を納める道府県もあります)。
根拠にした条文は地方税法35条・314条の3(所得割)、320条(住民税の納期)、72条の2(第一種事業)、72条の49の14(事業主控除)、72条の49の17(税率)、72条の51(事業税の納期)です。

予想どおりに売れた場合は24か月目までに払う2年目の税が合計約176万円になり、1年目の利益から取り分けておかなければなりません。国民健康保険料も前年の所得で上がることがあります(市区町村ごとに違うため試算外)。

従業員がいる場合:源泉所得税の「納期の特例」

源泉所得税は原則として翌月10日までに納めます。給与の支給人員が常時10人未満なら、申請すれば1〜6月分を7月10日、7〜12月分を翌年1月20日にまとめて納められます。
半年分が1日で出ていくうえに7月は予定納税とも重なります(国税庁 No.2505)。

法人の場合:1期目の決算の2か月後と、2期目の中間申告

  • 確定申告・納付は、事業年度の終了の日の翌日から2か月以内です(法人税法74条・77条)。3月決算なら5月末が期限です。
  • 中間申告は2期目からです。「前期の法人税額÷前期の月数×6」が10万円以下なら不要(法人税法71条)なので、前期が12か月なら法人税20万円ちょうどでも要りません。よく見る「20万円未満なら不要」という説明は境目がずれています。
  • 法人住民税の均等割は、利益に関係なくかかります。標準税率は資本金等1,000万円以下・従業者50人以下で道府県民税2万円+市町村民税5万円の年7万円です(地方税法52条・312条。自治体によってはこれより高い)。

納めきれないときに使える制度は納税の猶予と社会保険料の猶予にまとめました。

消費税はいつから払うのか:2割特例の終わり方は開業時期で違う

消費税は基準期間(個人は前々年、法人は原則として前々事業年度)の課税売上高が1,000万円以下なら原則として免除されます。開業1年目・2年目も原則は免税です。ただし次のどれかに当たると課税事業者になります。

  1. インボイス発行事業者の登録を受けた(登録日から課税事業者)
  2. 特定期間(個人は前年1〜6月、法人は原則として前事業年度の最初の6か月)の課税売上高が1,000万円超(給与等の支払額で判定してもよい)
  3. 法人で、事業年度の開始の日の資本金が1,000万円以上
  4. 課税事業者を選ぶ届出をした

上のカフェ(予想の100%)は1年目の売上が2,160万円なので3年目は基準期間の売上が1,000万円を超えて課税事業者になります。2年目については、人件費をすべて給与とすると1年目1〜6月の給与の支払額は180万円です。給与で判定すれば免税になります。

インボイス登録をした人の特例:2割特例から3割特例へ

登録で免税事業者から課税事業者になった人は、納付税額を売上税額の2割にできる2割特例を使えます。使えるのは令和8年(2026年)9月30日までの日を含む課税期間までです。
そのあとは個人事業者だけ、2027年分・2028年分に納付税額を売上税額の3割にできる3割特例があります(基準期間の課税売上高1,000万円以下などが条件)。法人に3割特例はありません。

開業・設立の時期(登録した場合) 2割特例 3割特例
個人・2025年に開業 2025年分・2026年分 2027年分・2028年分
個人・2026年に開業 2026年分 2027年分・2028年分
個人・2027年に開業 使えない 2027年分・2028年分
法人・2026年4月設立(3月決算) 1期目(2027年3月期)だけ 対象外
法人・2026年10月1日以後に設立 使えない 対象外

課税売上高800万円(税抜、税率10%)なら売上税額は80万円で、納付額は次のとおりです(地方消費税を含む)。

計算方法 納付額
2割特例 16万円
3割特例(個人・2027〜2028年分) 24万円
簡易課税・第4種(飲食店業など、みなし仕入率60%) 32万円
簡易課税・第5種(サービス業など、みなし仕入率50%) 40万円

※ 当サイトの試算。売上がすべて標準税率10%の場合です。本則課税は実際の仕入れの消費税額で変わるので省きました。
2027年4月〜2029年3月は飲食料品の税率引下げに伴い、飲食料品を売る事業者の申告に特例があります。

2026年に開業して登録した個人は、2027年分から納付が1.5倍です。特例を使った翌課税期間は、その申告期限までに届出を出せば簡易課税に移れます。個人の消費税の納期限は翌年3月31日で、所得税と同じ3月です。

運転資金は「何か月分」ではなく、不足額の合計で決める

「運転資金は3か月分」「3〜6か月分」といった目安はよく見かけるものの、公的な基準は見当たりません。公庫の制度も返済期間と据置期間の上限を示しているだけです。

上のカフェの運転資金270万円は経費・利息・家計費の合計(月926,250円)の2.9か月分で、ちょうど「3か月分」の目安に当たります。
それでも予想の50%なら10か月目に足りなくなり、12か月もたせるには355.5万円(約3.8か月分)が必要でした。
必要な額は月数で考えるより、次の式で見積もったほうが確実です。

必要な運転資金 = 黒字化するまでの毎月の不足額の合計 + 据置明けの元金返済 + 2年目の税金

黒字化までの期間は、パネル調査の「1年目の年末に約半数、2年目の年末に約7割が黒字基調」を目安にして12か月と24か月の2通りで計算しておくと、据置期間の長さも決めやすくなります。
一般的な計算の手順は運転資金の計算方法に、計画書への書き方は事業計画書の書き方に載せています。

資金が足りなくなりそうなときの順番

  1. 据置が明ける前に、借入先へ相談する。資金繰り表で不足が見えたら、その時点で相談します。新規開業・スタートアップ支援資金の据置期間の上限は5年ですが借りた後に据置を延ばす条件は、公式ページに記載がありません。進め方はリスケジュールの進め方で詳しく書いています。
  2. 税金は、納期限の前に税務署・自治体へ相談する。納税の猶予の制度があります。
  3. 追加の借入は、返済の見通しと一緒に。公庫・保証協会付融資(年2〜5%程度)が中心です。借入先の比較は個人事業主の資金調達に、赤字の決算書で申し込むときの話は赤字決算でも融資は受けられるかにまとめています。

税理士に相談するときの話は税理士への相談、公庫の窓口については日本政策金融公庫の融資制度で取り上げています。

よくある質問

創業1年目が赤字なのは普通ですか

珍しくありません。公庫の新規開業パネル調査(2016年開業)では、開業した年の年末に黒字基調の企業は50.9%、2年目の年末で70.7%でした。黒字化までの赤字を運転資金で埋められるかを確認してください。

据置期間が終わると、返済はいくら増えますか

840万円・7年・据置1年・年3.75%の元金均等返済なら、月26,250円から142,917円へ約5.4倍になります。
当サイトの仮設例では、家計費まで回すのに必要な客数が予想の約74%から約83%に上がりました。

開業2年目に初めて来る税金は何ですか

個人事業主は、3月の所得税、6月からの住民税、8月・11月の個人事業税です。1年目の申告納税額が15万円以上なら、7月・11月に所得税の予定納税もあります。
法人は1期目の決算の2か月後に申告・納付し、中間申告は2期目からです。法人住民税の均等割は赤字でもかかります。

インボイスの2割特例が終わると、消費税はどうなりますか

2割特例は2026年9月30日を含む課税期間までです。個人事業者は2027年分・2028年分に3割特例を使えますが、法人は使えず、簡易課税か本則課税になります。
課税売上高800万円なら、2割特例16万円に対して3割特例は24万円です。

まとめ

  • 開業者の41.3%は予想月商に届かず、開業した年の年末に黒字基調は約半数。1年目の計画割れは珍しくない
  • 据置1年の840万円は、据置明けに月の返済が約5.4倍。仮設例では、手元資金が減らない客数が予想の約74%から約83%に上がる
  • 予想の75%では据置明けから毎月約10万円ずつ減り、50%では10か月目に不足。100%でも2年目は税金で4か月マイナス
  • 2割特例は2026年9月30日を含む課税期間まで。個人は2027〜2028年分に3割特例、2026年10月以後に設立した法人は使えない

数字の調べ方

  • 開業後の売上・採算・廃業の割合は、公庫総合研究所の新規開業実態調査(2025年度)と新規開業パネル調査(第4コーホート)のPDFを原文で読み、合計値は当サイトで計算し直しました。
  • 融資の条件と利率は公庫の公式ページで、税の時期と計算は国税庁のタックスアンサーなどと地方税法・法人税法の条文で確かめました。返済額・資金繰り・税額は当サイトの試算で、前提は表の下に書いています。
  • ネットでよく見る「1年で6割(3割)廃業」「運転資金は3か月分」「中間申告は前年の納税額20万円未満なら不要」は、公的な原文で裏が取れないか食い違うため使っていません。起業後の生存率を国際比較した白書の数値も、原文を入手できなかったので使っていません。

このページについて

本ページは一般的な情報提供を目的としたもので、個別の資金調達・税務に関する助言ではありません。
返済条件は借入先に、税額は税理士・税務署・自治体にお問い合わせください。制度や税率は変わることがあるので、各機関の公式情報もあわせてご覧ください。
記載した計算例は説明のための単純化した試算です。

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